基礎知識

クラウドファンディングのテストマーケティング活用メリットと、意識すべき4つのポイント

クラウドファンディングを活用する企業が増えている。例えば、健康測定器メーカー・タニタが実施したプロジェクト『PlayStation®4「とある魔術の電脳戦機」に対応するツインスティック!』。自社の事業領域を超え、新領域参入に際して、商品開発のテストマーケティングという位置付けでクラウドファンディングを活用した事例だ。

クラウドファンディングのテストマーケティング タニタの事例

その他海外の人気商品を国内展開する際に、まずはクラウドファンディングを活用し市場の反応を見るといったケースも見受けられる。本記事では、テストマーケティングでクラウドファンディングを活用するメリットと、具体的な活用方法について紹介する。

クラウドファンディングはローコストでテストマーケティングを回すことが可能

クラウドファンディング実施の流れ

製品化におけるテストマーケティングをローコストで実施できるのが、クラウドファンディング活用のメリットだ。

製品化には大きく3つの手順が存在する。

手順1 試作品開発
手順2 テストマーケティング
手順3 製品生産

上記のうち、効率的な市場参入に向けて特に重要なのが「テストマーケティング」。世の中の製品ニーズが事前に把握できれば、生産過程に発生する在庫リスクを軽減し、効率的な販売計画を立てることが可能だ。

とはいえ、テストマーケティングそのものに対してそれなりのコストが発生する。商品開発に多くの費用や時間を要するため、テストマーケティングにそこまでのコストがかけられない事業者もいるはずだろう。

しかし、クラウドファンディングはそのようなコストを限りなく下げテストマーケティングを実施できる。無料でプロジェクト掲載できることや、新しいモノ好きなユーザーが集まっていることなど、手軽にテストマーケティングを実現できる環境が揃っている。

テストマーケティングでクラウドファンディングを活用するときに重要な4つの段取りと実践のコツ

とはいえ、ただ闇雲にクラウドファンディングを始めれば良いというわけでもない。クラウドファンディングを実施するにあたり、さまざまな工程が存在する。

クラウドファンディング実施前後に取り組むべきこと

クラウドファンディング上で効率的にテストマーケティングをするためには、「プロジェクト実施前」の段取りが非常に重要だ。プロジェクトを一度始めるとプロモーションやマーケティング的な施策といった支援を集めるアプローチが必要になり、そもそもの企画設計を見直すためのブレーキも踏みづらい。事前の段取りをおろそかにしてしまうと、正確なデータ収集が困難になる可能性も。そこで、実施前に行うべき4つの段取りに着目する。

1. 目標金額設定
2. 達成の試算
3. リターン設計
4. ページ企画

下記では、これら段取りを実践するときのコツを一つひとつ解説していこう。

1.目標金額設定

クラウドファンディングは前提として、資金調達の一手段であることは周知の事実だろう。そのため、まずは製品化に必要な資金から因数分解して、「クラウドファンディングでいくら集めるか?」を考えてみよう。

例えば、製品化に必要な資金が1,000万円だとする。そのうち、自己資金300万円、借入600万円とすると、クラウドファンディングで集めるべき金額は100万円になる。
では、100万円を目標金額に設定すれば良いのか。答えはNOだ。

クラウドファンディングには、「17%」の手数料が存在する※。単純に目標金額を100万円に設定してしまうと手数料が引かれ、実質手元に残る額は83万円。また、クラウドファンディング実施するうえでも、広告宣伝費や人件費、リターン費、配送費などのコストもかかるだろう。原価の発生に注意して目標金額を設定する必要がある。

※CAMPFIREの場合の手数料(2019年12月時点)

クラウドファンディングの適切な目標金額の設定方法

100万円の目標金額を設定する場合、実施時に原価が30万円かかるとしよう。目標金額に原価を上乗せすると必要資金は130万円になる。さらに、手数料分を上乗せ(130万円÷0.83)すると、実際必要な目標金額は156.6万円。というように、適切な目標金額を設定するためにも、事前に必要な金額を試算しておく必要がある。

2.達成の試算

目標金額を設定したら、その金額がちゃんと集まるかのシミュレーションが重要だ。このシミュレーションを実施する前に理解すべき知識に「3分の1の法則」がある。

プロジェクトを支援する層は3つに分かれる。

① 友人・知人
② 友人・知人の友達(や繋がりのある人)
③ その他

例えば、300万円を目標金額に設定する場合、それぞれの支援者層から100万円ずつ支援が受けられるかを考える必要があるのだ。中でも、特に①を意識するとシミュレーションしやすい。

まず、プロジェクトに支援してくれそうな①をリストアップ。リストアップした人たちの支援確度や支援額を計算してみよう。①が把握できれば、一定の支援の獲得が見込める。そのため、②③の層からも支援が集まりやすいことが分かる。

3.リターン設計

クラウドファンディングでは支援者に対する「リターン」を設定する。製品化における支援であれば完成された製品をリターンとして設定するのは一つの手だが、できる限り「クラウドファンディングで支援する意味のあるリターン」を意識すると良いだろう。

クラウドファンディングのリターン設定方法

コミュニティ的な活用で「商品完成披露パーティー招待」、新しい製品の製造段階を見せるための「設計図のプロトタイプ」「過去の販売商品(旧型製品)」、ほかにも「クラウドファンディング限定モデル」をつけたり、「刻印」「周辺機器」などのオプションをつけたりするのもアリだろう。

製品に合わせたクラウドファンディングならではのリターンを設定すれば、ただ製品だけをリターンに設定するより、支援することの意味が高まる。

4.ページ企画

最後に、一番のこだわりどころといっても過言ではないのが、「プロジェクトページ」の企画だ。クラウドファンディングのプロジェクトページは、「顧客に説明するLP」にあたる。製品について分かりやすく情報が記載されているかが重要だ。

特にページの中では「タイトル」と「本文」の分かりやすさを意識すると良いという。とはいえ、一口にすべて同じタイトルや本文を記載すれば良いわけではない。事前にどんなタイトルや本文の構成にするか事前に考えておこう。

■タイトル
タイトルは一番最初に目に飛び込んでくる要素だ。プロジェクトによってタイトルへ記載すべき情報が異なるため、プロジェクト(製品化)で何を一番伝えたいのか照らし合わせて考えてみてほしい。

・「どこで」「誰に」「何を」「どうしたい」
例:北海道・上富良野で、地ホップ100%の超希少クラフトビールをつくる!

クラウドファンディング事例 富良野のクラフトビール

・共感を呼ぶ(〇〇初、〇〇発など)
例:【日本初】肌診断から処方するカスタマイズサプリ|飲むスキンケアですっぴん美肌に
クラウドファンディング事例 カスタマイズできるスキンケアサプリ

・数値根拠
例:Phrozen Make|10倍造形速度、最強安定性、究極の光造形3Dプリンター
クラウドファンディング事例 3Dプリンター

・機能性
例:「THE ONE」超軽量!次世代折りたたみ式電動アシスト自転車
クラウドファンディング事例 電動自転車

■本文
本文には共通して下記の構成を基準にページを企画してみてほしい。

① はじめに(自己紹介など)
② このプロジェクトで実現したいこと
③ プロジェクトをやろうと思った理由
④ 製品について
⑤ これまでの活動
⑥ 資金の使い道
⑦ リターンについて
⑧ 実施スケジュール
⑨ さいごに

例えば、まだ世にない商品(自社開発や地産品開発)の場合は、②③の部分に重きを置いてみると良い。地域貢献、社会貢献できているか、世の中のどんな課題を解決したいと考えているかなど、製品に込めた“想い”を盛り込もう。また、世に広めたい商品(海外仕入れ品など)の場合は、④の情報を重点的に記載しよう。とにかく機能の価値を盛り込むことをオススメする。

さらにプロジェクトページの分かりやすさを追及する場合は、下記の要素を加えて構成してみよう。

・画像、動画
例)商品、生産者、生産工程、生産拠点など

・表、図
例)機能、採寸、他社製品比較、スケジュールなど

・Q&A
例)保証について、発送について、返品/返金についてなど

製品の実物が手元では見れないため、ビジュアルの情報や数字の情報で最終的に支援するかしないかを判断するだろう。テキストだけでは伝わりづらいため、画像や表などを駆使しプロジェクトの良さがしっかり伝わるページを企画すること。また、支援者が疑問に思いそうな点は、Q&Aで補足を入れておくと良いだろう。それ以外にも画像や表などでページ全体に抑揚をつけることで、離脱させないテクニカルな側面も持ち合わせている。

クラウドファンディングの特性としてプロジェクト終了後も、プロジェクトページは残り続ける。製品を再販する際にはメディアコンテンツの役割も担うことを想定して、ページを作り込むと良い。

クラウドファンディングでデータとユーザーの反応が手に入る

テストマーケティングでクラウドファンディングを活用することで、商品開発に役立つデータ(年齢層、性別)、ユーザーの反応(商品ニーズ)が収集でき、仮説検証が可能だ。

クラウドファンディングによって得られるデータ

「目標達成しなかったらどうしよう……。」と不安に思う事業者もいるかもしれない。そういった場合には、クラウドファンディングを需要予測のツールとして捉え活用すると良いだろう。支援者が0人でない限り、それは顕在的な需要があるということだ。ニーズの大きさをローコストで把握するために、クラウドファンディング活用をオススメしたい。

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