日本初上陸「プロテインビール」の国内需要は?テストマーケティングの成果に迫る

クラウドファンディングでは、世の中の「あったらいいな」を実現するためにプロジェクトを立ち上げる人も少なくない。 ライフスタイルサポート事業を行う株式会社Muscle Deliもまた、世の中の「あったらいいな」を実現するために、クラウドファンディングでプロジェクトを開始した。
プロジェクトデータ
プロジェクト名: 【日本初!】1本でタンパク質21g摂取できる「プロテインビール」を日本に!
プロジェクト目的: マーケティング活用
募集期間: 2019年11月12日~12月26日
調達金額: 1,122,000円(2019年12月11日時点)
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/208760

体づくりに必要不可欠な“食”をサポートする『Muscle Deli』

株式会社Muscle Deliは、ボディメイクに適した高タンパク低カロリーの食事を全国に宅配する事業を行っている。ボディメイクには“運動”と“食事”二つの要素が重要だ。ところが、日本にはジムやヨガなど体を鍛えるための場所はあるものの、体を鍛えるための“食事”が用意されている場所はなかった。

一方、海外には栄養が計算された食事が届くサービスがすでに存在していた。同社代表・西川真梨子さんはここに着目。自身もボディメイクを行っていた西川さんにとって「あったらいいな」と思っていたサービスだった。そこで、日本でボディメイクのための食事サポートサービスをしたいと考え、Muscle Deliを立ち上げたという。

マッスルデリ プロテインビール イメージ01
https://muscledeli.co.jp/

美味しくプロテインを楽しめる?『プロテインビール』とは

これまでMuscle Deliでは、高タンパク低カロリーのお弁当やオードブルを中心に販売してきた。この事業を進めていくにつれ、「さらにボディメイクをしている人の食事環境を良くしていきたい」という思いが募っていったそう。もっと色んな商品を提供していきたいと考えていた最中、目をつけたのが『プロテインビール』だ。本プロジェクトの立案者であり、普段はMuscle Deliでカスタマーサクセスの業務を行うサレンさんたっての希望だった。

(Muscle Deli カスタマーサクセス サレンさん)

 



「ボディメイクをする上で、つらい思いをせずにタンパク質を毎日十分に摂取するにはどうしたらいいのか日々考えていました。というのも、これまでタンパク質を十分に摂取するためにはプロテインを飲むことが一般的。でも、プロテインはお世辞にも飲みやすいとは言えません。粉タイプの商品はとても甘くて…プロテインを飲むのは運動後、または朝起きとか夜寝る前のタイミングが一般的で、正直飲み続けるのが苦になってきます。カスタマーサクセス業務でお客様も同じような意見を持っていました。

そんなとき、海外のボディメイク商品を社内で試食試飲する機会があって、たまたま出会ったのがドイツのJOYBRAUが製造する『プロテインビール』でした。炭酸のプロテイン飲料を初めて飲んだのですが、フルーティーな味わいがとても美味しくて。さらに、タンパク質が21gも入っている。これなら、無理なく、むしろ美味しくプロテインを飲み続けることができると考えました」

プロテインとビール、この二つの組み合わせは想像がつかないかもしれない。ましてや、ボディメイクをする人にとって糖質の高いお酒であるビールは天敵といえるだろう。さらに、アルコールは筋肉分解のおそれもあり、飲酒を控える人もいるほどだ。
しかし、『プロテインビール』は100mlあたり糖質2.4g。ノンアルコールのため筋肉分解の心配がないどころか、筋肉の成長に不可欠なアミノ酸、BCAAが配合されている。脂肪燃焼に効果的な成分(Lカルニチン、ベータアラミン)も含まれていることから、ダイエット中の人にも最適な飲み物だ。

プロテインと聞いて、味を心配する人もいるかと思うが、ビールの本場であるドイツが生産しているだけのことはあり、柑橘系のフルーティーな味わいと少しの苦みを感じられる本格的な味だという。


「『プロテインビール』があれば、プロテインが苦手な人、ビールを我慢していた人、十分なタンパク質を摂取するのに課題を感じていた人、さまざまな人の課題を解決できると感じました。ところが、日本での流通がされていなかった。それならば、Muscle Deliがドイツから『プロテインビール』を輸入しようと思ったんです」

サレンさんの「あったらいいな」に社内のメンバーが賛同し、『プロテインビール』のプロジェクトが立ち上がった。

商品マーケティングを兼ねたクラウドファンディングの活用

しかし、ドイツから輸入するにはそれなりのコストがかかる。ましてや、日本には出回っていない商品だ。プロテインの市場規模自体、2019年には480億円(前年比16.7%増)と拡大傾向にあるものの、『プロテインビール』がちゃんと売れるのか、そもそも受け入れてもらえるか、全く分からなった。いきなり自社で進めていくにはリスクが大きいと判断した結果、商品マーケティングを兼ねたクラウドファンディング実施に踏み切った。

「クラウドファンディングであれば、市場の反応を見ながら進めていくことが可能だと判断しました。一般的な缶ビールの価格は200~300円程度で販売されていますが、『プロテインビール』はドイツから輸入することもあって一般的な缶ビールのような価格で販売することは困難です。クラウドファンディングであれば、試験販売として1本1,000円という高価格帯でも世に出しやすいと考えました。」

さらに、クラウドファンディング実施に踏み切ったのにはもう一つ理由があった。

「スピード感を持ってプロジェクトを進めていきたかったんです。日本にまだないことが価値だと思っていたので、どうしても『日本初』として封切したかった。通常販売するとなると、流通経路の確保におけるHPの作成など準備しなければならないことが多く、スピード感を担保できない可能性もあります。スピード感を保ったままプロジェクトの進行が可能というのも、クラウドファンディング実施理由の一つです」

プロジェクト開始2日で目標達成。裏側にはこんな苦労も…

Muscle Deliがクラウドファンディング実施を進めていく中で、一つ問題が生じた。それは、『プロテインビール』の生産者であるドイツのJOYBRAUとのコミュニケーションだ。遠く離れたドイツ、その上、言語の壁もある。急に「プロテインビールを取り扱わせてほしい」と頼み込むのも勇気が必要だ。

プロジェクトページを作成する場合、「生産者のリアルな情報」が支援者に刺さることも多く、本プロジェクトでも生産者であるJOYBRAUの情報をできる限り多く得ようと試みた。また、WEB上に掲載されている『プロテインビール』の情報は、すべて英語。情報を引き出すためには、コミュニケーションが必要だった。難航を極めたという。

「できるだけ生産者の声、生産におけるリアルな情報を伝えた方が支援が集まるだろうと思っていました。ただ、遠く離れていて会いに行くことが難しかったこと、『プロテインビール』を生産しているのがJOYBRAUだけだったため情報をあまり開示してくれなかったこともあって。また、弊社のと取引も少額だったことから、完全に信頼してもらえる関係でもなかったんです。

何とか情報を引き出すために、日本でなぜプロテインビールが必要なのかといった思いの面や、消費税の現状といった流通の面など、私たちが持っている情報をなるべく多く伝えていきました。少しずつ情報を開示してはくれたのですが満足できる情報量ではなく、ページ作成には苦労しましたね」

(プロテインビール生産者 JOYBRAU)

 



本来であれば現地へ足を運び、生産者と直接話す、生産工程の写真を撮影することが望ましいだろう。しかし、国内ならまだしも、国外となると難しいのは事実だ。

限られた素材からどのようにプロジェクトページを作成したのか伺うと、「とにかく私の思いを伝えました」とサレンさんは語った。

「なぜ『プロテインビール』を広めたいのか、私のあったらいいな!という思いの丈がほとんど占める形になりました(笑)。でも、結果的に、支援いただいた方やSNSなどで応援してくれているメッセージをいただいて。こんなに反響が大きいとは思いもしていなかったので、とても嬉しかったです」

苦労を乗り越え、2019年11月12日に『【日本初!】1本でタンパク質21g摂取できる「プロテインビール」を日本に!』のプロジェクトページを公開。SNSを中心に多くの反響を呼び、開始2日後には目標金額の50万円を達成。現在はネクストゴールで200万円に挑戦している。

地道な啓蒙活動で多くのシェアを獲得

また、ただプロジェクトページにサレンさんの思いの丈を綴っただけではない。この思いの丈を広げていくため、地道な啓蒙活動をおこなったという。
プロジェクトページ公開時には、Muscle DeliのWEBサイトやLINE@、Twitterアカウントで情報を発信、またプレスリリースの配信も実施した。中でも一番反響が大きかったのがTwitterだったそうだ。

「普段Muscle Deliを愛用してくださるお客様、インフルエンサーの方もいらっしゃるので、そういった方たちに『クラウドファンディング始めました!』と連絡しました。そしたら、多くの人がシェアしてくれたんです」



「また、過去に『プロテインビールがほしい』とつぶやきをしている方へリプライを送ったり、弊社のフィットネスジム出身のメンバーを通じ、元同僚に声かけしてもらったり。地道な啓蒙活動がシェア力のある人の目に留まって、拡散されていった感覚がありますね」

パトロン111名(2019年12月10日時点)のうち、Muscle Deliの既存ユーザーは、サレンさんが把握する限り2名ほど。残りは新規ユーザーだった。
とはいえ、既存ユーザーへの啓蒙活動を怠ったわけではない。LINE@上でクラウドファンディング実施前に「Muscle Deliが何か始めるよ」といった内容を投稿。その後、クラウドファンディング実施開始のアナウンスを投稿したときには、約75%の開封率だったという。少しでも多くのユーザーの興味を引き付けることが、クラウドファンディング成功の鍵でもある。より達成に近づくため、できることには手を伸ばす地道な努力が垣間見えた。

『プロテインビール』本来の価値を探り、方向性を定めていく

資金調達に成功したことで『プロテインビール』の市場価値を把握することができたMuscle Deli。今後は『プロテインビール』の日本販売の実現に向けて、二つの方法を模索しているそうだ。

「一つ目に『プロテインビール』をドイツから一般的な価格で流通させる方法を探ってます。一般的な価格で販売するには、かなり大きなロットで輸入しなければなりません。数千万単位の投資が必要になります。なので、二つ目の方法として日本で『プロテインビール』を生産する術を探っています。

ただ、まずはクラウドファンディングで支援して頂いた方たちへ『プロテインビール』を届ける。そこから、『プロテインビール』に対してどんな反応を得られるか見て、今後の方向性を定めていこうと考えています」


最後に、サレンさんにクラウドファンディングの活用を考えている人へアドバイスを求めたところ、「あったらいいなに刺さるものを選ぶことがオススメ」と話してくれた。

「私はプロテインの飲みづらさを以前から感じていました。トレーニングを始めたばかりのころ、市販のコーヒーやアルコール飲料にプロテインの粉を混ぜたりと、何とか飲みやすくなる方法はないか数か月間模索していました。しかし、どうしても美味しいものにはなりませんでした。自分がそう感じているということは、ほかの誰かも同じことを考えているのではと思いました。実際にトレーニング仲間も溶けきらない粉や、運動後の甘いプロテインを無理に飲んでいる姿を身近に見てきました。
特にフィットネスやボディメイクをしている人なら共感してくれるはずです。『プロテインビール』はそういった共感の部分がシェアに繋がっていきました。

誰かがほしいと思っているけど、まだ実現されていないアイデアでクラウドファンディングを実施してみてはいかがでしょうか」

【プロフィール】
名前:サレン
年齢:30歳
勤続:5ヶ月
所属:株式会社Muscle Deli カスタマーサクセス
トレーニング歴:2018年6月より約1年半、週2-3回ウエイトトレーニング
3歳のアメショと暮らしている
毎日お客様の声を聞いている中で、お客様の悩みや不安をマッスルデリを通じて少しでも解消したい!と日々カスタマーサクセスの仕事に取り組んでいます!