クラウドファンディング(以下、CF)は、ただ闇雲にプロジェクトをスタートさせても、プロジェクトを成立させるのは難しい。では、一体どのようにプロジェクトの成立を導いていけるのだろうか?
CFを行う際には、主に4つの作業工程がある。
1)プロジェクト立案時
2)プロジェクト公開前
3)プロジェクト公開後
4)プロジェクト成立後
本記事では、CFサービス『CAMPFIRE』のキュレーターから、これら“各作業工程で意識すべきポイント”について話を聞いてみた。
プロジェクト立案時
はじめに、CFを活用してプロジェクトを立ち上げたいと思ったタイミングで意識すべきポイントは3つ。
● ターゲット設定は明確に
プロジェクトへ支援してくれる人を明確にすることが重要だ。なるべく親しい友人を思い浮かべてみよう。細かくペルソナを組み立てて言語化する必要はなく、身近な人の中で支援してくれそうな人をターゲットに設定するのがポイント。
おそらく、CFを実施することを一番初めに伝えるのは、友人や知人であるはず。自分の周囲の人が興味を持たない、支援してくれないプロジェクトを、全くの他人から支援を得ることは極めて困難だ。
ターゲットの設定を曖昧にすることで、後のリターンの組み立てや目標金額設定に影響を及ぼし兼ねない。手を抜かずに出来る限り明確なターゲット設定を意識しよう。
● ターゲットに寄り添ったリターンを組み立てる
支援してくれそうな人を思い浮かべたとき、その人が欲しいと思えるようなリターンを設定する。そして、リターンはプロジェクトの枠にとらわれずに設定するのがポイントだ。
例えば、お酒に関わるプロジェクトを始める場合に、お酒の飲めない友達から支援をしてもらうなら、お菓子や食べ物をリターンにする。ただ支援してもらうことだけを考えず、プロジェクトに協力してくれた仲間へ御礼をする、という意識を持つと良いだろう。
また、リターンの価格設定も同様。プロジェクトを支援してくれる友人が大学生の場合と社会人の場合では、支払える金額も変わってくる。次に説明する目標金額の設定とも通ずるが、ターゲットによってリターンの価格設定を決めることも重要だ。
● 目標金額は資産(人脈、リソース)から考える
自分の築いてきた人脈から、どれだけ支援が集められそうかを最初に考えよう。CFには『三分の一の法則』が存在する。支援の内訳として多いのが、三分の一が友達、三分の一が友達の友達、三分の一が他人だと言われている。そのため、まず自分の友達だけで、どれだけの支援を集められるか考えるのがポイントだ。
例えば、100万円の目標金額を設定した場合、自分の友達から30万円集められるかを考える。一人の友達から30万円支援してもらえそうか、30人から1万円ずつ支援してもらえそうか、というように何人の友達からどれくらいの支援が得られるかを想定してみよう。
また、100万円の目標金額を達成するために、一人1万円ずつ支援してもらうとすると、100人からの支援が必要になる。プロジェクトを見て支援してくれる人の割合が仮に1%とすると、10,000人にプロジェクトのアプローチをしなければならない。アプローチするためのリソースの有無も明確にしておくことが重要だ。
上記3つのポイントを意識するためにも『他人のプロジェクトを支援してみる』ことをオススメする。なぜそのプロジェクトに支援したいと思ったのか、いくら支援したいと思ったのかなど、支援者の立場になる、自分がターゲットになる。
新しいプロダクトを開発するとき、お店を開業するとき、競合となるサービスに触れるはずだ。CFも同じこと。CFでお金を使う立場に立って考えると、ターゲットがより明確になっていくだろう。
プロジェクト公開前
ターゲット~目標金額が決まり、プロジェクトを公の場に披露する前に意識すべきポイントは2つ。
● プロジェクトページは手紙をつくるように
プロジェクト立案時に思い浮かべたターゲットに向けて、手紙を書くようなイメージで、プロジェクトページをつくろう。分かりやすい、かつ想いが伝わる文章が最も重要だ。
特に、文字数が少ないとプロジェクトはあまり成功しないという。情報が薄い、想いが伝わってこないようだ。CAMPFIREのデータによると、目標達成しているプロジェクトページの文字数は8,000文字前後が多いのだそう。
また、見出しや太文字、画像など、“ひと手間”装飾を入れるのも出来る限り実践してみると良いだろう。ただ文字だけが記載されていると、読み進めづらく、最後まで到達しないまま離脱してしまう可能性が高い。テキストと装飾のバランスを意識してみよう。
例えば、見出しでメリハリをつけたり、一つのセクションに対して1枚の画像を入れたり、長文が続くようなら太字にしたりすること。ページ内すべてを読まなくても、装飾だけである程度伝わるようにするのが理想的。文章や写真の上手下手はあるかもしれないが、それよりも自分のリソースを最大限に引き出してプロジェクトページを作成することが大切だ。
【参考になるプロジェクトページ】
▶ 豚コレラに負けるな。愛知の三代目たちが『世界一透明な豚肉』を作ります。
▶ 【未来は山からやってきた】 お湯だけ2分で即うま本格リゾット!できました。
● ターゲットへの事前告知
プロジェクトページの作成が終わったら、ターゲットとなる人へ確認してもらおう。分かりやすいページになっているか、想いが伝わるかをチェックしてもらうことで、事前のプロモーションにも繋がる。支援や応援を加速させ、味方につけられるチャンスでもある。なるべく多くの関係者を事前に作っておくことが肝心だ。
また、プロジェクトを公開して、いきなり「支援して!」と言われても、相手の事情によっては難しい場合もあるだろう。しかし、事前に告知しておけば、支援の準備もしやすい。
例えば、ゲームソフトであれば発売前からCMなどで告知などを見ます。発売日が分かればそれを購入するために貯金やお金の調整をするはず。CFも同じように支援してくれそうな人には伝えて、プロジェクト公開後に合わせて支援や応援が集まりやすい土台を組み立てておこう。
支援されている、応援されているプロジェクトは、注目も集まりやすい。三分の一の法則でもあるように、全く知らない人からの支援を得るためには、身近な人からの支援がプロジェクト成功の鍵となる。事前告知は重要な要素の一つだろう。
プロジェクト公開後
続いて、プロジェクトが公開されたあと目標達成に向けて意識すべきポイントは2つ。
● 支援者を募るためのプロモーション
はじめに事前告知をしていた支援してくれそうな身近な人に個別で連絡を取ろう。前述したように、三分の一の支援を集めるために動くいていく。
ここでは、SNSなどで一括で報告するのではなく、あくまでも“個別で”連絡を取るのがポイントだ。できれば直接、難しければ電話、メール、チャットなどを利用する。手紙を渡すときと同じような感覚で伝えると良いだろう。
身近な人への連絡しプロジェクトに支援が入ってきたタイミングで、SNSや各種メディアなどを駆使し、より多くの人に認知してもらえるようにアプローチしていく。SNSは身近な人たちと繋がりのある人へ届けられるように、各種メディアはプロジェクトのターゲットが集まっていそうな媒体へアプローチできるよう動くことが大切だ。
できるだけ確度が高い人たちへ発信が行き届くようにプロモーションしよう。
● 支援してくれた人とのコミュニケーション
支援してくれた人とは必ずコミュニケーションを取ろう。支援者の個人情報自体はプロジェクト終了まで明かされないが、管理画面上でチャットのやり取りが可能。
支援へのお礼や情報拡散のお願いを伝えたり、支援してくれた理由を聞いたりする。単なる支援者ではなく、“プロジェクトの生産過程に関わる一人の仲間として接すること”がポイント。このコミュニケーションが出来ていない人は多いようだ。
また、SNSでプロジェクトに反応してくれた人や拡散の協力をしてくれた人にも、コミュニケーションを取ることは大事な行動の一つ。受け身でいるのでなく、支援・応援してくれた人をプロジェクトに巻き込んでいくことが、プロジェクト成功への道に繋がるだろう。
プロジェクト成立後
そして、最後のプロジェクト成立後。CFは、プロジェクトが無事に成立してから本格的にプロジェクトが始動していく。そんな中で意識すべきポイントは『支援者への進捗共有』だ。
● 支援者への進捗共有は欠かさず行う
目標達成したあとは、リターンを遂行するというミッションがある。それまでは、支援者とのコミュニケーションを欠かさず行うことが大切だ。支援者の多くはプロジェクトがどのように動いているか気になっているという。そのためにも、現在の進捗状況、工程などを共有することがポイントだ。
また、当初予定していた日程よりリターンの進捗状況が著しくない、何らかの事情でリターンが変わってしまった、ということもあるだろう。その場合は、隠したり嘘をついたりせず、失敗したことも含めて報告しよう。
リターンを期待して支援した人より、プロジェクトそのものへの応援で支援してくれた人の方が多いはず。信頼関係を壊さないため、相手に自分のことを理解してもらうために、コミュニケーションは欠かさずに行おう。
リソースの出し惜しみは絶対にしないこと
最後に、CF実施時に“これだけはNGなこと”として念を押されたのが、『リソースの出し惜しみ』だ。
「SNSは使いたくない、人に頼みたくない、自分の顔を出したくない…など、“できるのにやらない”人がいます。このようにリソースを出し惜しみする人は目標達成が難しい。
CFをしたからといって、簡単にお金が集まることはありません。せっかく稼いだお金を人の応援のために使う、この重大性を認識してほしいです。支援者側にとっては、決して費用対効果は高くない。
にも関わらず、誤字脱字が多かったり、写真が適当だったり、できることをしなかったり、そういう方もいらっしゃいます。それは、お金をもらうことへの意識の低さが現れていると思われても仕方がない。お金をもらうことへの意識を高め、自分の持てるリソースを最大限に駆使して頂けると良いと思います」
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