コラム

クラウドファンディングで資金集め、何をやったら『違法』なの? – 弁護士に聞くクラウドファンディング法律問題

手軽な資金調達手段として浸透しつつあるクラウドファンディングですが、中には有資格者以外が実施すると違法になってしまうパターンもあります。具体的には「投資型」と呼ばれるクラウドファンディングがそれに該当します。しかしながら、購入型、寄付型とは異なり、「投資型クラウドファンディング」と聞いてピンと来る人は少ないのではないでしょうか?

投資型の中にも3つの種類があり、それぞれ必要な免許も異なります。無免許で、ついうっかり「投資型」に踏み込んでしまわないためにも、基本から弁護士に解説していただきました。

<弁護士紹介>
木村康紀(きむら・やすのり)弁護士。2006年早稲田大学法学部卒。同年に旧司法試験に合格、牛島総合法律事務所入所。内閣府大臣官房会計課会計専門官を経てメリットパートナーズ法律事務所パートナー弁護士に就任。基本情報技術者資格を保持。多数の顧問先を抱える傍らシードラウンドのベンチャー支援も行っている。

■「投資型」クラウドファンディングは有資格者しかできない

Q:「投資型クラウドファンディング」とは具体的には何を指すのでしょうか。「購入型」「寄付型」と何が違いますか?
A:まず、「購入型」と「寄付型」についておさらいしておきましょう。「購入型」については、クラウドファンディングのリターンとなるサービスや物品の「予約購入」と同等とみなします。完成予定の映画の試写チケットや、開発予定のガジェットをリターンにする場合などが挙げられます。

「寄付型」は社会貢献や慈善行為などを目的に、特に金銭的な価値のある対価を求めない、文字通り寄付行為に近いクラウドファンディングの形ですね。僻地に小学校を作るのが目的で、リターンが直筆の手紙といったケースや、医療費を募るクラウドファンディングなどもこれに該当するでしょう。

さて「投資型」ですが、言葉の通り、パトロンに預かった資金を運用して、分配金や利子といったリターンで返す形式のクラウドファンディングを指します。投資型は「株式型・ファンド型」の2つのパターンが挙げられます。一つずつ解説していきます。

■株式型

まず、「株式型」を解説します。株式型は、それぞれのパトロンが株式を購入するスタイルの投資型クラウドファンディングです。

株式型クラウドファンディング

必要な資格は、以下のとおりです。プラットフォーム事業者に求められます。

【必要な資格】

・第一種少額電子募集取扱業者(金融商品取引法)

クラウドファンディングが流行り出したころは、投資型クラウドファンディングの事業を行うためには、証券会社が取得しているものと同一の金融商品取引業者の登録が必要とされておりました。もっとも、少額の投資を受けることを前提としたクラウドファンディングの事業を行うためだけにその登録を受けるのはハードルが高いということで、平成26年の金融商品取引法改正で、要件を緩和した資格を第一種少額電子募集取扱業者と第二種少額電子募集取扱業者という資格ができました。

Q:第一種と第二種はどう違うのでしょうか?
A: 販売・勧誘の対象物が異なります。第一種少額電子募集取扱業者は株式を主とした流動性の高い有価証券等を販売・勧誘する場合、第二種少額電子募集取扱業者は、第一種で対象としている有価証券等よりも流動性の低い商品の販売・勧誘行為を行う場合に取得します。従前の第一種金融商品取引事業者及び第二種金融商品取引事業者に対応しているものです。

Q:どのように要件が緩和されたのでしょうか。
A: 具体的には、①クラウドファンディングを通じて調達する総額が1億円未満、かつ②パトロン(株式を取得する者)の払込額が50万円以下であるもののみを取り扱うことを前提に、第一種金融商品取引業者の最低資本金が5,000万円であることに対し、最低資本金を1000万円となっていることや、第一種金融商品取引業者では兼業規制がある一方で、それがなくなり参入しやすくなっているなど様々な点で規制緩和がされています。ただ、業務管理体制整備に関しては依然、厳しいままであり、規制緩和後もそこまで多くの業者が資格を取得してはいません。

Q:では「友達の会社の株を今のうちに株買っておかない?」とLINEグループなどを作って、不特定多数に声をかけるのは、NGなのでしょうか。
A:はい、隠れて投資情報のLINEアカウントを作り、不特定多数の人から資金を募るのはNGです。

■ファンド型

最後に、ファンド型について解説します。これはまずプラットフォームが、プロジェクトオーナーごとのファンドを組成して、それぞれのパトロンがファンド持分を購入する、という投資型クラウドファンディングのスタイルです。

ファンド型クラウドファンディング

【必要な資格】

・第二種金融商品取引業者登録(金融商品取引法)
・投資運用業、投資助言・代理業登録(金融商品取引法)

先ほどと同様に、資金(ファンド)の販売・勧誘行為を行うので第二種金融商品取引業者に登録します。また、プラットフォームとして投資判断のためのアドバイスなどを行う場合には投資運用業などの登録も必要です。

Q:「投資助言」とは具体的にはどんなことをするのでしょうか。
A:投資家に対して総合的なアドバイスをする行為を指します。おすすめの銘柄や投資商品を紹介することも含まれますね。投資型クラウドファンディングの中には、パトロンから資金を募って運用する業務と、投資の相談をしてきたパトロンにより最適なファンドを勧める業務の両方を担っているプラットフォームも少なくありません。そうした場合に上記の二種類の登録免許が必要になります。

■融資型

まず、融資型から解説します。融資型はソーシャルレンディングとも呼ばれていますが、一つのプロジェクトに複数のパトロンが資金を出し、大口化した上でプロジェクトオーナーに融資するスタイルの投資型クラウドファンディングです。

融資型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディング最大手のCAMPFIREが運営する融資型クラウドファンディング CAMPFIRE Owners

必要な資格は、一般的には、以下のとおりです。いずれもプラットフォーム事業者に求められます。

【必要な資格】

貸金業者登録(貸金業)
第二種金融商品取引業者登録(金融商品取引法)

Q:「貸金業者登録」とはなんでしょうか?
A:上の図からも分かるように、融資型は「要はお金を貸すので、利息を付けて返してね」という話です。ところが、直接貸すのはプラットフォームになるので、プラットフォーム側が貸金業者登録をしなければなりません。

貸金業者には、以下の要件を満たさないと登録できません。登録を受けようとする者等が、欠格要件に該当しないこと。登録を受けようとする者(法人の場合は常勤の役員のうち)に『貸付けの業務』に三年以上従事した経験者がいること。貸金業務取扱主任者がいること。これ以外にも「資産額が5,000万円以上あること」などの財産要件もあり、実態として個人で登録するのはなかなかハードルが高いと思われます。

Q:匿名組合とは何でしょうか。
A:商法に規定がある出資(投資)の形態の一つで、自己の名前を明かさずに組合に加わり、投資した事業で利益が出たら配当を受けられる、という方式です。出資したお金は事業者の財産とみなされますし、使い方についても出資者の指示を受けずに決定することができます。匿名組合は複数の出資者を募る必要があります。こうした行為はファンドの販売や調達の勧誘行為とみなされるため「第二種金融商品取引業者登録」が必要です。こちらも資本金が1000万円以上であることなど、厳しい要件が求められます。

Q:となると、例えば「ベンチャーを作って融資型クラウドファンディングプラットフォームを運営したい!」と思ってもかなりハードルは高そうですね……。
A:プラットフォーム運営企業自体に、それなりの人員と管理体制、資本金が求められますので、ハードルは非常に高いと思います。

Q:投資型クラウドファンディングは、各種規制の有無なども調べてから運営をする必要がありますね。
A:そうですね。それは考えようによっては当然で、不特定多数の人から資金を募るクラウドファンディングでは、きちんと規制を敷かないと詐欺行為の温床になってしまいます。よって各種免許も登録したら終わり、ではなく、金融庁の厳しい監督を受け続けなければなりません。

これからプラットフォーム運営を考えている人がいるとすれば、投資型クラウドファンディングは極めてハードルが高いことを忘れないで下さい。資金を出すパトロンになる場合は、プラットフォーム上に必ず各種免許が表示されているか確認してから利用しましょう。また、損失が出ても通常の投資と同様に「自己責任」となってしまうことを忘れないで下さい。

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