基礎知識

「海外のクラウドファンディングファンって安全ですか?」 弁護士に聞くクラウドファンディング法律問題

クラウドファンディングの先駆けといえば、米国のKickstarterやIndigogoが知られています。プラットフォームによっては、パトロン、プロジェクトオーナー共に日本から利用するのは難しいものもありますが、そうした規制がないプラットフォームや、プロジェクトオーナーを代行してくれる会社などもあるようです。

「海外のクラウドファンディングを利用したい」「利用して大丈夫だろうか」という質問は、弁護士のところにも良く届くそうです。日本に比べて、一プロジェクトあたりの調達金額が大きいことから魅力的なリターン商品が集まっていることも理由の一つと思われます。

実際にどんなトラブルがあるのか。安全に利用するためには? 弁護士に聞きました。

木村弁護士_02
<弁護士紹介>
木村康紀(きむら・やすのり)弁護士。2006年早稲田大学法学部卒。同年に旧司法試験に合格、牛島総合法律事務所入所。内閣府大臣官房会計課会計専門官を経てメリットパートナーズ法律事務所パートナー弁護士に就任。基本情報技術者資格を保持。多数の顧問先を抱える傍らシードラウンドのベンチャー支援も行っている。

■よくあるトラブルは「リターンが届かない」

Q:クラウドファンディング自体の認知が高まると「海外のクラウドファンディングを利用したい」という声も出てきているようですね。海外クラウドファンディングについて、最も多い相談内容はどんなものがあるのでしょうか。

A:やはり、最もポピュラーなのは、「パトロンとしてお金を出したのにリターンが届かない」というものではないでしょうか。海外のクラウドファンディングプラットフォームを見ていると、目標金額も大きく、リターン品の魅力的な説明文に、高クオリティの紹介動画を載せた夢のようなプロジェクトを見かけます。クラウドファンディングの魅力は、こうしたプロジェクトを個人として応援するわくわく感、宝探しのような喜びにありますので、一概に否定はできません。

リターンが届かない要因は「届けるつもりだったけれど、プロジェクトがうまくいかなくなった」というケースと、「そもそもだますつもりだった」というケースに分かれるはずです。真面目に経営していても、ベンチャー企業などでは製品リリースが予定通りにいかないことは日常茶飯事です。よって、前者は不可抗力と言えるでしょう。

A:後者の、悪質なプロジェクトの見分け方はありますか?

Q:そうですね、ポイントはいくつかあります。日本のクラウドファンディングでも活用できるポイントなので、ぜひ覚えておいてください。

【怪しいプロジェクトを見分けるポイント3箇条】
(1)プロジェクトオーナーのプロフィール
(2)過去のプロジェクト実施実績
(3)商品説明

(1)からご説明しましょう。

まず、プロジェクトオーナーの経歴がどれだけ明示されているか、よく確認してみて下さい。
大手のクラウドファンディングプラットフォームではフェイスブック連携を義務付けているところもありますが、そうではないところもあります。紐づけがされていない場合は、ご自身で検索して探す努力は必要でしょう。

CAMPFIREでのプロジェクトオーナーのプロフィール記載例

プロジェクトオーナーの名前が分かったら、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSもよくチェックしてみて下さい。どんな内容を公開投稿して、そこにどんなコメントが付いているか、どんなレスを返しているか、でも人となりが見えてきます。

また、ニュースサイトなどで過去のニュースにその人物の名前が出ているかも検索してみてください。立派な経歴であるにもかかわらず、過去に一度もニュースサイトの記事にヒットしない場合、経歴詐称の可能性も高まります。

プロジェクトオーナーが法人の場合は、会社のHPも検索してみましょう。リンクは貼ってあるけれど、よくよくHPを見ると代表者の氏名や会社所在地などが載っていないケースがあるようです。こうした会社は、最悪の場合、運営の実態がないことも考えられます。パトロンになるには注意と覚悟が必要です。

プロジェクトオーナーの経歴と、プロジェクト内容の整合性にも注目して下さい。例えば「空飛ぶ車を作る」という目的で1億円を調達するプロジェクトなのに、オーナーにエンジニアリングの経験がなく、CTOなども明示されていない場合は「はて、誰が開発するんだろう……」という疑問がわいてくるはずです。

Q:プロジェクトオーナーの欄に記述がなくても、プロモーション動画などには顔を出しているケースもありますね。

A:はい、あちこちに情報が散らばっているケースもありますが、逆に顔を出していても本人ではないというケースもあります。プロモーション用の動画は外部に制作を委託していることがあるからです。

ついうっかりと本人だ、と思い込んでしまわないようにしましょう。

フェイスブックだけでなく、リンクトインなど複数のSNSと照らし合わせて、整合性もチェックしてみるとよいと思います。

■過去にプロジェクトが成功しているオーナーは信ぴょう性が高い

次に(2)過去のプロジェクト実施実績 について説明します。

過去に同一、もしくは別のプラットフォームでプロジェクトを成功させており、リターンもきちんと届けているオーナーは、そうではないオーナーより信頼できると言えます。

ぜひ、過去のプロジェクト一覧もチェックしてみて下さい。中には、「リターンで粗悪品が届いた」といったコメントもあるかもしれません。近年は、詐欺と言われることを防ぐために、明らかに粗悪品、かつ廉価なリターンを届ける悪質な事例もあるので、チェックして損はないでしょう。

■その製品やサービスは本当にすごいのか、冷静に判断を

最後に、(3)の商品説明について解説します。

クラウドファンディングはいかにプロジェクトを魅力的にアピールし、資金を集めるかがカギ。しかしながらパトロンとしてお金を出すならば、冷静にその価値を判断したいものです。

中には、説明文をじっくり読んでいると「おかしいぞ」と感じるプロジェクトがあるかもしれません。例えば、パソコンやガジェットであれば、搭載されているハードディスクのスペックなどからある程度の性能は予測できることがあります。収納力をうたったバッグなのに、容量などが書いていない場合は質問をしてみましょう。

最後に、同じような性能で、すでに製品化されているものが市場に出回っていないか、出回っているとしたら市場価格はいくらぐらいなのかも調べてみるとよいでしょう。
クラウドファンディングのリターン品、しかも海外のプロジェクトとなると、故障時などスムーズに対応してもらえるかは分かりません。意外と、日本国内で似たようなスペックのものが販売されているかもしれません。

■不誠実な行為は逆に訴えられることも?

Q:海外のクラウドファンディングでプロジェクトオーナーになるとしたらいかがでしょうか。

A:まず、プラットフォームの利用規約で日本在住者がプロジェクトオーナーになることを認めていない場合は、代行業者などに依頼をすることになると思われます。その場合、何かトラブルがあってもすべて代行業者とのやり取りになり、プラットフォーム側のサポートを直接受けられないことが考えられますので注意して下さい。

利用規約なども当然現地の言葉で書かれているでしょうが「ちゃんと読んでいませんでした」は通用しません。

Q:トラブルとはどんなことが考えられますか。
A:例えば、リターンの発送が遅れる可能性がある、とか、悪質な誹謗中傷をしてくるパトロンがいる、とか、パトロンにリターンを発送したのに届かないと言われている、とかですね。

もともと海外とのやり取りということもあり、言葉の壁もあります。代行業者によっては、こちらの日本語をすべて英訳してやり取りをしてくれるかもしれませんが、プラットフォームの運営や、その先にいるパトロンたちがすべて英語ネイティブとも限りません。

不誠実な対応をしてしまうと、ご自身が海外から訴えられることもありえますので、注意が必要です。

■法律トラブルは日本国内の裁判所に訴訟提起できるが・・・

Q:もし法律面のトラブルが起こったら、どうすればよいでしょうか。

A: 個人で海外のクラウドファンディングにパトロンとして参加した場合は、消費者問題ということにもなり得ますので、日本の裁判所で日本法に基づき裁判を行うことも不可能ではありません。また、その他のケースでも日本の裁判所で訴訟をすることが可能な場合もあります。しかし、日本で訴訟をしたところで、海外にいるプロジェクトオーナーがどこまで誠実に対応してくれるかは分かりません。
条約の状況によっては、日本の裁判で勝訴すれば海外で強制執行できることもありますが、そもそもクラウドファンディングで資金を調達しようとするプロジェクトオーナーの資産を海外で見つけるのも容易ではありません。
一方で、海外で訴訟提起をするとなると、基本的には現地の弁護士に依頼する必要が出てきますが、インターネットや電話だけで引き受ける弁護士も少なく、また、費用に見合った結果が期待できるかも分かりません。
海外のクラウドファンディングで自身がプロジェクトオーナーとなった場合も、同様に弁護士を探す労力が大きいほか、費用も多額になるケースが多いものと思われます(日本の弁護士にも協力してもらうと二重で弁護士費用もかかります。)。

海外のクラウドファンディングは許容できるリスクを良く考えた上で、利用したほうがよいでしょう。

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