コラム

「新たな”濃いつながり”を」いちご観光農園が手掛けた苗オーナープロジェクトの真意

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言及び外出自粛の影響で、ホテルなどの宿泊業と共に観光業も多大なるダメージを負った。

全国各地で様々なプロジェクトが立ち上がり、これまでクラウドファンディングに関わりのなかった事業者も多くの方が起案している。

岡山県美作(みまさか)市にある観光農園、美作農園もそのうちのひとつだ。

いちごの苗オーナー権であなただけのいちごをお届けします!プロジェクトは、美作農園代表の娘である笠原氏がオーナーとして起案。

5月30日〜7月12日の1ヶ月半ほどのプロジェクトにて698人の方から5,778,280円の支援を集める大達成の形で終了した。

今回、初挑戦の当プロジェクトで目玉になったのは「苗オーナー」リターン。

いちごの”苗”を購入し、農園に育ててもらったいちごが収穫後に手元に届くというもの。

苗オーナーリターン起案の背景と、今回のプロジェクト挑戦をきっかけに得ることができた視点についてお伺いしました。

 

いちご狩りの観光客が8割減、売上減少と共に抱える大量の在庫。

ー本日はよろしくお願い致します。まず最初に美作農園さんの事業についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

こちらこそ、よろしくお願いします。
美作農園は、春はいちご狩り、秋はぶどう狩りが楽しめる観光農園です。また、湯郷温泉街にある美作農園のいちごやぶどうを使ったスイーツを提供する農園カフェ湯郷も運営しています。
HP:http://mimaen.co.jp/

ーいちごとぶどうを軸に生産以外の事業も展開なさってらっしゃるんですね。
今回のプロジェクトを起案するに至った経緯もお伺いできますでしょうか。

はい。例年であれば3月から6月の間は、GWをピークとしたいちご狩りのシーズンです。

ニュースで新型コロナウイルスの話が出てきたときは、「そんなに大変なことにはならないだろう」くらいに思っていたのですがどんどん事態が深刻になっていって。

新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言で8割以上の売上が減少、100件以上の団体がキャンセルになってしまいました。

それに伴い温泉街で営業しているカフェにもお客さんが来なくなってしまったので、そちらも売上は8割減と、観光を中心とした売上は全て激減してしまったんです。

ー8割減…宿泊業や観光業の方には本当に大きなダメージですよね…それがクラウドファンディング起案の直接のきっかけだったのでしょうか?

そうですね…売上減少はもちろん深刻なのですが、同時にどれだけ人が来なくてもいちごは育つんです。

なので最初は、今年出来上がったいちごを全国に届けるためのクラウドファンディングを検討しました。

しかし、新型コロナウイルスによる影響はたしかに大変ですが、困っている状況を助けて頂くという形ではなくこの機会だからこそ未来にむけて挑戦できることに取り組みたいと思って。

 

ー新型コロナウイルスの影響はあくまできっかけとして捉えられたのですね。今回は社長さんではなく娘である笠原さんがオーナーとして起案されていますが、どのような流れで今回のプロジェクトに至ったのでしょうか?

実は、今回の騒動よりも前にクラウドファンディングの起案を検討していたことがあったんです。

以前検討していた際はいちごハウス増設のタイミングでのプロジェクト起案を検討していたのですが、目の前の忙しさに押されてクラウドファンディングのような新しいことへの挑戦ができませんでした。

また、社長である父も「クラウドファンディングって、なに…?」というような感覚だったので、そのときは話が流れてしまって。

しかし今回は農園のピークであるGWに予期せぬトラブルに直撃してしまって、ウイルスの蔓延を防ぐために大々的な集客ができる訳でもない。

だったらもうこれまで挑戦できてなかったアイディアに挑戦するタイミングは今しかないと思って。

なので私が内容やリターンについても責任を持つ「オーナー」として社長にも任せてもらい、プロジェクトを起案させてもらいました。

ーピンチの打開策であると同時に新しい取り組みへの挑戦だったんですね。

 

「新たな”濃いつながり”をつくりたい」起案当初は存在しなかった”苗オーナー”リターンの狙い

ー改めて今回のプロジェクトのメインとなった「苗オーナー」についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

はい。新型コロナウイルスの影響があるので観光農園としての販路を拡大していくのではなく、いまこの時期だからこそできる新しいことに挑戦しなければいけないと思い。

その上で、いちご狩りに毎年足を運んでくださるようなリピーターさんのように、”濃いつながり”を持ったお客さまを獲得したいと思いました。

そこで前々から挑戦できずにアイディアの時点でストップしていた苗オーナーに挑戦してみようと思ったんです。

「苗オーナー」はいちごがまだ苗の時点でご購入頂き、生育状況などをお伝えした上で収穫して配送するシステムです。

ワインのためのぶどうの木のオーナーになるなど前々から苗オーナーというのは存在していたので、いちごでもぜひ試してみたいと思いリターンに用意しました。

ークラウドファンディングをきっかけとして時代に合わせた新たな販路開拓に乗り出したんですね。

はい。以前から社内でのアイディアとしては苗オーナーは存在していたのですが、自社サイトでスタートしても誰の目にも触れないだろうとも思っていたので、試してみる機会がなくて。

そこで、クラウドファンディングのリターンに入れることでどれくらいの需要があるのかを見るためにもリターンに入れることが決定しました。

 

ー500名以上の方が苗オーナーリターンを購入してくださいましたが、結果をご覧になってどのように思いましたか?

目標金額を50万円に設定していたのはまさにそれくらいの金額が達成できたらいいなという望みでしたので、正直ここまで反響を頂くとは思いもしませんでした。

 

観光農園が、この時代だからこそできる挑戦を。

ー結果、今回のプロジェクトは大成功だったと言えるのではないかと思います。
いま同じように頑張っている農家さんに今回の経験を経てお伝えしたいことなどはございますか?

本当にどの業界も、いまは大変で辛いときだと思っています。

そして、どの農家さんも本当にいいものを作ってらっしゃるので、いいものを届けるのが当たり前のような時代になってきました。

私達は、今回のきっかけを通して”いちごができるまでの過程”も一緒にお客さまに販売する試みをはじめました。

これはなにも、突然思いついたことではありません。

以前から「こんなこともやってみたらいいんじゃないか」と思っていたけど、忙しくて手をつけられなかったことです。

正直、いちごの苗を販売するというのは私達自身もみなさまに受け入れて頂けるか半信半疑でしたが、今回のクラウドファンディングで実際に買ってくださる方がいらっしゃるとわかりました。

今後は苗オーナーのサービスをもっと充実させられるように、YouTubeで苗の成長具合を撮影する予定です。

また、収穫の時期になったら個々でお客様をお招きするような形などもできないかと考えたりもしています。

これらは全て、クラウドファンディングで苗オーナーというアイディアをリターンという形にした結果、これから始めてみようと思えるようになったことです。

私達は今回のクラウドファンディングというきっかけを通して、農園が新しいことに挑戦する可能性はまだまだたくさんあるのではないかと感じました。

クラウドファンディングはプロジェクトオーナーの想いを乗せて伝えることができるプラットフォームです。

もし私達と同じように、これから新たな取り組みへの挑戦を検討されてる農家さんがいれば、この機会にアイディアを形にして想いを発信してみて頂けたらと思います。

私達も、またこれからアイディアを形にするチャレンジを続け、農家や農園の活動事例となるような挑戦を続けていきたいと思っています。

一緒に、がんばっていきましょう。

ーありがとうございました。

大堀 悟(ぼりさん)

CAMPFIRE公式キュレーションパートナーとしてプロジェクト作成なども行う取材ライター。元板前です。

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