2008年5月のスタート以降、返礼品などの話題性もあり、空前のブームにもなった「ふるさと納税」制度。本来は、都市部に集中した税収を、地方に振り分ける措置として、住んでいる地域の自治体に税金を納める代わりに、他の自治体へ納税する仕組みだ。名称に“納税”とは付くものの、実際には都道府県または市区町村への“寄付”といえる。
2019年6月には、総務省が自治体による返礼品の過度な競争の“見直し”を図るべく、新制度を開始。返礼品は寄付金の3割以下、地場産品に限られることとなった。
こうしたふるさと納税の2018年度の寄付総額は前年度に比べ140.3%増加の5127億円となり、6年連続で過去最高の寄付総額を更新している。
では、その魅力はどこにあるのだろうか――。次に挙げる3つのメリットによるところが大きい。
1)好きな地域を選んで寄付ができる
2)地域の特産品などのお礼品がもらえる
3)税金の還付・控除が受けられる※
こうしたメリットを持つふるさと納税に、最近ではクラウドファンディングを合わせた「クラウドファンディング型ふるさと納税」が新たに登場。より寄付金の使途を明確にして募集できるメリットは、自治体から注目されている。
そうした中、ふるさと納税サイト「さとふる」を運営しふるさと納税に関する自治体業務を一括代行する株式会社さとふるは「さとふるクラウドファンディング」を2018年3月より開始。2018年5月クラウドファンディング運営会社のCAMPFIREと業務提携を締結し、ふるさと納税制度を活用した自治体のクラウドファンディングプロジェクトへの寄付受け付けを行うほか、両社で協力して自治体へプロジェクトの企画アドバイスや記事の制作支援などを行っている。当初は「さとふるクラウドファンディング」に掲載している一部のプロジェクトのみを両社で支援していたが、2019年6月以降に掲載を開始したすべてのプロジェクトについて両社にて支援を行うようになった。
そこで今回は、株式会社さとふる広報の坂平由貴さんと道岡志保さん、株式会社CAMPFIRE(キャンプファイヤー)ふるさと納税事業担当の照井翔登に、クラウドファンディング型ふるさと納税に対する考えや想い、成功のポイントについて語ってもらった。
※ふるさと納税では原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が所得控除の対象となる
■さとふるとCAMPFIREの強みを活かした「さとふるクラウドファンディング」
クラウドファンディング型ふるさと納税の特徴として自治体が寄付を募っている事業やイベントなどの内容を吟味した上で、寄付先を設定できる点があります。そのため、通常のふるさと納税に比べ、寄付をきっかけに自治体の事業やその地域について興味・関心を持つことにつながりやすいところがあります。
――今年2019年より株式会社さとふると、株式会社CAMPFIREのより強固な関係性の元、自治体支援を行う「さとふるクラウドファンディング」ですが、両社はどのようにして進めているのでしょうか。
■地域と人を活性化させ、発展を後押しするクラウドファンディング型ふるさと納税
2つ目は、専用のWebページに対象となる事業やイベントの内容、その取り組みへの想いなど掲載できるので、より具体的にそして効果的にPRすることができる点にあると考えています。例えば、この地域はこのようなお祭りをやっている、あるいは甲子園出場が決まった高校野球部のための遠征費を募る場合はこの地域は野球が強い、などその地域のことを今まで知らなかった人に知っていただく機会にもなると見ています。
こうした発想が、自治体の取り組みを多くの人に伝えることに寄与しているのはもちろん、「さとふるクラウドファンディング」にも活かされていると思います。
自治体のメリットとしてもう一つ加えるならば、クラウドファンディング型ふるさと納税をきっかけに、新たなことへ挑戦する職員さんが現れてくることです。一つのプロジェクトを担当されると、いい意味での変化をうかがうことがあり、職員さんにとっていい刺激が受けられる機会になっていると見ています。地域だけでなく、人も活性化する――それを「さとふるクラウドファンディング」で体現していきたいと思っています。
――逆に、自治体の方にとってデメリットになることはありませんか。
一方、自治体の事業やイベントの場合、関わっている方が職員という特性上、その中心物にクローズアップし露出させることが難しい側面があります。そのため、その周辺で関わっているキーマンの想いや考えを引き出し訴求するなどの工夫が必要です。
■寄付がもたらす、地域貢献の実感と活動の場を広げる機会
また、そもそもふるさと納税という特性上、通常のクラウドファンディングにはない、所得税控除を受けられる点もメリットの一つになります。
さらに、寄付をきっかけに、その地域への興味・関心がさらに高まり、寄付者ご自身の活動の場が広がる機会にもなるかと思います。
寄付者の方から「この事業に役立ててほしい」と支援いただいた寄付金が、実際にその事業でどのように使われ成果として何が実現できたのかを伝える、レポートの提示が自治体全体に広がれば、間違いなく寄付者の方へのメリットの一つになるでしょう。
――一方、寄付者の方にとってデメリットになることはありませんか。
自治体への寄付という観点で、事業やイベントが行うことを前提に寄付を募っているので、集まった寄付金は目標額を達成する・達成しないに関係なく、それぞれの自治体にお渡しするようになっています。寄付しようと考えている方は、こうした点をご理解の上、寄付していただけるといいでしょう。
■成功ポイントのキーワードは“共感”“体験”“継続”
また、2018年5月~7月に実施した、新潟県妙高市の「日本最北限『火打山のライチョウ』を、絶滅から救いたい!」という事業では、1ヵ月半という短期間で目標金額130万円に対し、約132万円の寄付金を集めることに成功しています。国の天然記念物に指定される、妙高戸隠連山国立公園の火打山山頂周辺に生息するニホンライチョウ、通称“火打山のライチョウ”を絶滅の危機から救うべく、専門チームの調査保護活動を支援する事業です。動物保護の観点から多くの人に寄付していただいた成果と見ています。
この事業は昨年に続き、第二弾として今年2019年10月より改めて「絶滅の危機を救え!最小個体数の「火打山のライチョウ」の未来を守るプロジェクト」という表題にて寄付募集を開始しています。再び寄付募集に至った背景には、まちづくりの理念として「生命地域の創造」を掲げる妙高市が、ライチョウを環境保全のシンボルとして守っていこうとする意識があり、今後も継続的に調査保護活動を行いたいという想いからと見ています。このように、鉄道や動物のジャンルには共感性があり、これが寄付者の方の心を動かしていると考えます。
ただし、共感するポイントは人によってそれぞれ異なるので、できる限り関与する人たちの想いをキャッチアップし、そのプロジェクトについて細かく分かりやすく明記して、共感の接点を一つでも多く創ることが、寄付者の方を多く募る秘訣になるでしょう。
―その他に、クラウドファンディング型ふるさと納税を成功させるためのポイントはありますか。
このように、プロジェクトに支援してくれた寄付者の方に、より継続したコミュニケーションを取っていくことで、地域と人の継続的なつながりを創り、地域のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。
そのためには、できるだけ多くの人が参加できるように、その入り口としてさまざまな共感ポイント創り出していくことに注力していきます。
■“寄付文化の醸成”がますます進む日本社会へ
―クラウドファンディング型ふるさと納税の登場により、日本での寄付に対する意識も変わっていくのでしょうか。
災害発生の後にSNSを見ていると、「ふるさと納税で寄付できないか」「ここのふるさと納税サイトは寄付の受付窓口が立ち上がっていた」といった情報のやり取りがされているほど、災害支援のための寄付金をより迅速に自治体へ届けるための手段として、ふるさと納税が一般に認知されていることがうかがえます。
当社ではふるさと納税サイト「さとふる」を通じて、今年10月に発生した台風19号で被害を受けた全国40自治体に対して寄付の受付窓口を開設し、約2億円(2019年11月時点)の寄付金を集めることができました。
たとえ、寄付をしたことがなくても、ふるさと納税を認知をしている方は日本でも確実に増えています。寄付をする行為そのものに理解や認識が広まっていくことも、寄付文化の醸成に貢献していると考えます。
<企業概要>
・企業名:株式会社さとふる
・所在地:東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン13階
・代表取締役社長:藤井 宏明
・事業内容:
ふるさと納税ポータルサイトの企画・運営
自治体業務の代行
地域活性化事業の企画・運営 等
■さとふるクラウドファンディングWebサイト:
https://www.satofull.jp/projects/top.php