約14億人もの人口を誇る中国。クラウドファンディングも多く集まりそうなイメージがあるが、果たしてどんなプラットフォームが人気なのか? 多額の資金を調達する傾向があるプロジェクトは? 中国のクラウドファンディング市場を解説する。
◼️中国のクラウドファンディングは4種類?
まず日本のクラウドファンディングは、
1.購入型 パトロンになる見返りとして、開発予定の製品や映画チケットなどの物品がもらえるタイプ
2.寄付型 慈善事業や社会貢献の度合いが高いプロジェクトに、実質的に寄付をするタイプ
3.投資型 投資利益を得ることを目的にファンディングするタイプ
の3種類が存在するとされる。
中国ではどうだろうか。
中国のクラウドファンディング市場は急速に発展している。華中新金融研究院が発行する「2016 中国インターネット CF 年度報告」によると、中国には2016年末で600を超えるクラウドファンディングプラットフォームが存在。また、調達額も大きく、インターネット通販大手「京東」傘下の「京東クラウドファンディング」では調査時点で実に21億元(約320億円)以上を調達しているという。
また、上海と北京に拠点を置くコンサルティング会社 「daxueconsulting」は、中国のクラウドファンディングには以下の4種類があると述べている。
1.購入型
2.寄付型
3.債務型(Pear to Pear型)
4.投資型
3の「債務型」は耳慣れないが、要はオンライン上のプラットフォームを利用して、投資家と中小企業や個人のマッチングをする仕組みだ。
それぞれどんなプラットフォームが有名なのか、詳しく見ていこう。なお、3の債務型、4の投資型についてはその時々の中国当局による規制の影響が大きいこと、ファンディングする側にも投資知識が必要とされることなどから、今回は購入型と寄付型をメインに紹介する。
■購入型はEC企業が参入
・京東クラウドファンディング
ECサイト「京東商城」が運営するクラウドファンディングは「京東金融」のサイトの一コーナー。中秋の名月になぞらえた手作りの皿のような工芸品や高級干しナマコ、速乾タオルなど、通常の通販サイトの商品とそん色ないラインナップに見える。ただ、手作りをアピールしたり、高級感を醸し出していたりと資金が集まりやすいように工夫されているようだ。
・taobaoクラウドファンディング
アリババグループが運営。ドローンやAR地球儀からハイテクカーナビ、個性的なデザインの洋服、子供向けプログラミングロボットなど日本人が見ても興味を惹かれるプロジェクトが並んでいる。
なお、2019年8月末時点の人気プロジェクトは「フランスのデザイナーがデザインした乳酸菌入り月餅(達成率500%超)」。日本のクラウドファンディングに比べて、実現度の高い
プロジェクトも多く、通常のECサイトの買い物と変わらないようにも思える。
◼️出資者保護の独特の仕組み
また、何事も変化のスピードが速い中国。プロジェクト不成立時や、詐欺に遭った場合などの対処に関しては、利用規約の変更などにも注意したい。
◼️寄付型では医療費を募る行為が話題に
中国で特に盛んなのが、この医療費を募るプロジェクトだ。医療費に特化したクラウドファンディングプラットフォーム「軽松筹(QFund)」はこれまでに約3300億円以上を調達した巨大医療費クラウドファンディングプラットフォーム。医師が作成したカルテや戸籍謄本などをそろえた上でプロジェクトを申請し、承認されるとファンディングが開始される仕組みだという。
実際のプロジェクトを見てみると、目標額は70万元(約1000万円)、150万元(2250万円)などと決して小さな額ではないにも関わらず、順調に寄付が集まっている。しかも、利用者の手数料はわずか数パーセントから、無料だったケースまでがあるようだ。
■保険事業につなげて収益化を目指す
彼らが視野にいれているのが保険だ。傘下に持っている高額医療費の互助コミュニティ「軽松互助」では10元の互助金を払えば、いざ重大疾病にり患した際に最大で年間30万元を受け取ることができる。このほかに、通常の医療保険を取り扱う「軽松e保」も別プラットフォームとして抱えている。
日本でもこうしたビジネス連携が進んではいるものの、中国と比較するとまだ発展の余地がありそうだ。
■詐欺行為や当局による規制も
中国のニュースサイトSearchina社によれば、「e租宝」は投資利回り9-15%の高利回りのプロジェクトを掲載し、700億元の資金を調達。しかしそれらのうち95%は偽物のプロジェクトで、掲載を認める代わりにプロジェクトオーナーから「e租宝」が多額のキックバックを受け取っていた。被害総額は500億元、被害者数は90万人以上とも言われ「中国史上最大のねずみ講事件」とも呼ばれている。2017年には、運営元の役員2名が終身刑の判決を受けた。
また、2017年には中国当局が、仮想通貨(IC)によるクラウドファンディングを全面的に禁止。Techcrunchの報道によれば、中国当局はICO(Initial Coin Offering)の大部分は「金融詐欺であり、ネズミ講(pyramid scheme)である」と強く非難。シンガポールのMAS(シンガポール金融管理局)と同様の見解を示したと言え、日本国内に今後規制強化の波が及ぶ可能性もありそうだ。
さすがインターネット利用者数も多い中国、調達額も詐欺の被害額も、日本とはケタ違いと言える。しかしそれだけに、プラットフォーム運営にも激しい競争が求められる。パトロン側にもプラットフォームやプロジェクトの良し悪し、成否を見分ける目が求められる、いわば「レッドオーシャン」と言えるかもしれない。