インタビュー

全国からの支援が1,300万円越え!群馬ポッポタウン「SLあぷと」修繕プロジェクト達成までの道のり、支援と共に得た経験。

「クラウドファンディングだからこそ体験できたことだった。」

そう語るのは群馬県は安中市にある、碓氷峠鉄道文化むら「ポッポタウン」の理事長「中島吉久」氏だ。

碓氷峠鉄道文化むらは2021年1月18日よりクラウドファンディングでの資金調達を開始。

ポッポタウンの顔であったが2年前から運行を中止していた蒸気機関車「SLあぷとくん」の修繕費用1,300万円を目標としてスタートした。

鉄道の町に汽笛よ響け!SLあぷとくん修復プロジェクト

同プロジェクトは最終日の19時に目標金額を達成、残りわずか4時間での出来事だった。

最終的には目標金額の105%となる13,725,500円の支援を全国857名の方から頂きプロジェクトを終了した。

「地域に愛されるテーマパーク」だからこそ実現した今回のプロジェクト。

■なぜプロジェクト起案に至ったのか
■どのようなことに意識してプロジェクトを作成したのか
■プロジェクト期間中にはどのような募集を行ったのか
■プロジェクトを経て得たものはなんだったのか

地域に関するプロジェクトを起案するすべての方に知って頂きたい「実話」を、碓氷峠鉄道文化むら理事長 中島氏にお伺いしました。

 

碓氷峠鉄道文化むら「ポッポタウン」と「SLあぷとくん」


ーまずはじめに、碓氷峠鉄道文化むらと「SLあぷとくん」についてお伺いできますか。

はい。碓氷峠鉄道文化むらは群馬県安中市にある「旧碓氷線の歴史を伝え、小さなお子様から鉄道ファンまで楽しめる」というコンセプトで運営している鉄道テーマパークです。

パークは、104年に渡り運行して平成9年に廃線した碓氷線の歴史を見て触れて体験できる施設となっており、碓氷線の歴史を伝える鉄道資料館を開設しているほか、碓氷線で活躍した各種電気機関車や特急の「あさま号」を展示。さらに、EF63形電気機関車の体験運転もできる施設になっています。

ー100年以上も運行してきた路線の歴史を知ることができる施設なんですね。
今回のプロジェクトのきっかけとなったSLあぷとくんとはどういうものなのでしょうか?

はい。SLあぷとくんは蒸気機関車で、もう1台のディーゼル機関車DLあぷとくんと共に碓氷峠鉄道文化むら内の約800mを10分ほどで一周しています。

しかし「SLあぷとくんは」運用開始から20年以上が経過したことで、大規模な修繕箇所が目立つようになり、現在はお客様への安全確保のために止むを得ず運行を停止していました。

「SLあぷとくん」運行休止から2年、クラウドファンディングという手段との出会い。

ー20年以上もたくさんの人を乗せて走ってきたあぷとくんが動かなくなってしまったのは残念ですね…。
今回のプロジェクトに至ったきっかけについてもお伺いできますか。

はい。SLあぷとくんは修繕必要箇所が目立ってきて約2年間、お客様の安全を守るために運行を中止し、SLあぷとくんと共に交代で運行していたDLあぷとくんのみで連続稼働を行っていました。

運行停止から1年、期間が伸びるほど更に修繕費用は大きくなり、最悪「廃車」という厳しい現実もありました。

そこで、ポッポタウン自体が市の財産であるため、最初は安中市への修繕費用捻出を依頼しましたが、資金不足でできないとのことだったんです。

半ば諦めかけていたところで、安中市がCAMPFIREと連携したことを耳にしました。

参考:CAMPFIRE、安中市と公共施設等の利活用に関する協定を締結

これをきっかけにCAMPFIREの担当者様に相談させて頂いたのが2020年の6月のことです。

リターンは来園前提のものを、プロジェクトを通してポッポタウンに来て頂くために。

ー最初からクラウドファンディングを想定されていた訳でなく、市の予算との兼ね合いから行うことになったプロジェクトだったんですね。
プロジェクトを作成するにあたって意識されたことはございますか?

はい、まずプロジェクト作成をサポート頂いたCAMPFIRE担当者の方に「お客様から喜ばれるような返礼品が大切」というお話を頂きました。

我々、そしてポッポタウンだからできる”喜ばれる返礼”は何なのかを考えた結果、やはり現地に来て頂き、実際に走るSLあぷとくんを見て頂くことだと。

なので、リターンに関しては全てにポッポタウンの入場券を入れ、CAMPFIRE特典として通常営業ではできない「投炭体験」などの体験系のリターンを入れていきました。

また、クラウドファンディングの特典として、今回は碓氷峠鉄道文化むらの隣りにある「峠の釜めし」の掛け紙を手掛けたイラストレーター、バーニア600氏描きおろしによるオリジナル入園券などをお願いしたりもしています。

ー今回のプロジェクトのリターンに限らず、碓氷峠鉄道文化むらでのテント宿泊イベントなど、オリジナリティあふれるアイディアがたくさん出ているように感じます。これらは全て社員のみなさまで考えられているのでしょうか?

はい。社員だけでなく安中市長の呼びかけではじまった「碓氷峠鉄道文化むらを10倍楽しむ会」という、社員も含めて地域の有志の方や関係他社の方にも入ってくださっているチームにも協力して頂いています。

その中で50件ほどのアイディアがあったのですが、その中で実現可能なものから実施していっております。

今回のクラウドファンディングのリターン発案に関しても、会のみなさんのお力を借りられたおかげでバラエティ豊かなものが用意できました。

ー地域住民の方のアイディアも実施されているんですね。今回のクラウドファンディングに限らず、地域の方々との繋がりで碓氷峠鉄道文化むらが成り立っていて、本当に愛されている場所なんだと感じました。

企業周り・チラシくばり・行政との協力。自分たちにできることをすべて。

ークラウドファンディング特典として、通常営業では行っていない体験リターンや入場券特別デザインを用意されたんですね。
実際にプロジェクトを開始してからはどのような活動をされたのでしょうか。

はい。とにかく自分たちができること、思いつくことは社員総出で行いました。

安中市の企業に直接支援のお願いに行くこともしましたし、各戸にチラシを投函させて頂いたり、コンビニや駅をまわってチラシを掲載させて頂くなど、地道に足を使って宣伝し続けました。

ーチラシのポストインまで…!すごい…!その他どこかメディア媒体に掲載などはされていたのでしょうか?

はい。行政のお力も借りて、安中市の広報あんなかに掲載して頂いたりもしています。
それがきっかけで地元の新聞社やNHKのメディアなどにも掲載して頂くことができました。

先の見えない不安、全国と内外からの応援が活力に。

ープロジェクトをはじめてみて、大変だったこともあるかと思いますが、いかがでしょうか。

はい。とてつもなく不安でした。

目標金額も大きなものですし、達成できるかわからない、先の見えない状況の中で毎日不安に押しつぶされそうになっていました。

そんな中で気持ちを支えてくれたのは、支援をくださった方からの応援メッセージです。

普段、ポッポタウンを運営していて、もちろん「楽しかった」という感謝のお声掛けを頂くことはあります。

しかし、「子供の頃の思い出の場所なので末永く続いてほしいです」「親子2代で楽しませてもらってます、がんばってください」といったような応援の声をこんなにたくさん頂けるとは思っていませんでした。

こうしたみなさまからの応援メッセージのおかげで、なんとか最後まで走り切ることができました。

ー応援コメントが励みになってくれたんですね。たしかに好きなテーマパークに直接お礼を伝えるという機会は少ないかもしれません。

とても嬉しかったです。また、支援者の方だけでなく社内のメンバーにもとても助けられました。

今回のプロジェクトは3〜4人のメンバーで行ったのですが、社員が一丸となってプロジェクトを広めることに協力してくれて。

社員みんなの力がなければ今回のプロジェクトは達成していなかったと思います。

ークラウドファンディングが社員一丸となるきっかけにも繋がったんですね。
支援者のコメント欄を拝見致しました。県外の方ではじめて関わってくださった方も多かったように感じますが、いかがでしょうか。

はい。詳しく数字として出せているわけではないのですが、肌感としては支援者の約7割の方が県外に住んでいらっしゃる方だったのではないかと思います。

北は北海道、南は九州までほんとうに多くの方からご支援を頂けました。

CAMPFIREのページ上で「人気上昇中のプロジェクト」に掲載して頂き、そこから全国の方にも認知して頂けたという実感があります。

私達がただ支援を募るだけではこんなに全国からご支援を頂くことはできなかったと思うので、CAMPFIREさんに掲載して全国の方にプロジェクトを見て頂けたのはプロジェクトの支援に大きく影響したのではないかと思っています。

支援者と迎えた出発式、感謝とこれからの願い。

ー実際にSLあぷとくんの修理も終わって運行が再開されたそうですね。無事プロジェクトが達成し、ここまで至った上で感じたことはありますか?

はい。まず、支援者のみなさんと一緒に出発式を迎えられたのが本当に嬉しかったです。

クラウドファンディングというきっかけを通してみんなでSLあぷとくんを修理して、スタッフも支援者も一緒になって運行を見守ることができました。

なかには自作のプラカード持って再運行を見に来てくださった方もいて。

引用元ツイート:湊の番人

また、実際に蒸気をあげて動く姿を見て「SLあぷとくんは生き物なんだなあ」と、1人のファンとして感じました。

ー支援者の方と一緒に、ご自身もSLあぷとくんのファンとして再運行を迎えられたというのは本当に素敵な話ですね…。最後に、支援者のみなさまにお伝えしたいことなどはございますか?

はい。まずは本当にたくさんのご支援と熱い応援メッセージ、ありがとうございました。

プロジェクトが開始した瞬間から、乾いた砂から水を出すような気持ちでがんばってきましたが、本当に何度も不安に潰されそうになっていました。

そんなときに励みになったのはみなさま1人1人の支援と、応援メッセージです。

今回のクラウドファンディングを通して改めて社員や地域の方とのつながりも強くなったと実感していますし、クラウドファンディングに挑戦したからこそ得られた貴重な体験だったと思います。

現在は新型コロナウイルスで気軽に「ご来場ください」とお伝えしづらいご時世ではありますが、やはり実際に足を運んでくださる方がいて、笑顔になってくださることが一番の喜びです。

ぜひ、ポッポタウンにお越し頂き、みなさんの手によってまた走ることができたSLあぷとくんをご覧頂ければと思います。

ーありがとうございました。

4.5万件のプロジェクト掲載ノウハウを基に作成した「CAMPFIRE」クラウドファンディングマニュアル
「CAMPFIRE」は2011年のサービス開始からこれまで掲載プロジェクト数は45,000件以上と国内最大。クラウドファンディングページ作成時のポイントや、ノウハウなどを濃縮した「CAMPFIRE」オリジナルマニュアルと共にクラウドファンディングに挑戦してみましょう。

大堀 悟(ぼりさん)

CAMPFIRE公式キュレーションパートナーとしてプロジェクト作成なども行う取材ライター。元板前です。

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