コラム

130年の歴史にメスを入れる!マシュマロ和菓子「つるたま」の挑戦

どんなシーンでも、お土産はセンスが問われるもの。
食べ物の場合は味はもちろん、デザインにもこだわった商品がいいですよね。

うっ、かわいい。
見てくださいよ、この洗練されたデザイン。

こちらは、岡山県岡山市にある「つるの玉子本舗」が展開するブランド「つるたま」の商品です。

「つるの玉子本舗」は、かつて日本初の「マシュマロ和菓子」を生み出した老舗和菓子店。
「もう一度マシュマロ和菓子を復興したい!」そんな想いを託し、クラウドファンディングを利用して「つるたま」は誕生しました。

最高級の素材にこだわり、ネットショップを利用した新たな販売方法にも挑戦しているという「つるたま」。

その誕生をめぐるストーリーについて、ブランドを手掛けた「つるの玉子本舗」の専務・下山恭正さんに伺いました。

プロフィール
下山恭正
つるの玉子本舗専務、作曲家。
30代までヨーロッパで作曲活動を行っていたが、2000年ごろに父親が病に倒れたことがきっかけで帰国。弟が店を継いだつるの玉子本舗の専務となる。店頭に立つこともあれば、実際にお菓子作りに携わることもある。

売れ行きダウンの「マシュマロ和菓子」をブランド化

ーーこんにちは。さっそく「つるたま」をいただいてみたのですが、ふわふわの食感に優しい甘さがマッチしてとてもおいしいです!「マシュマロ和菓子」という名称はあまり耳馴染みがないのですが……。

下山 「マシュマロ和菓子」はつるの玉子本舗が日本で初めて発明したお菓子のジャンルです。マシュマロの中に白あんを閉じ込めた「つるの玉子」という商品から生まれました。

「つるの玉子」が誕生したのは店の創業と同じ1887年(明治20年)。当時はハイカラだと言われてとても人気があったんです。全国的に知られていて、伊勢の赤福に匹敵するくらいの知名度でした。森光子主演で舞台化された小説『放浪記』にも登場するんですよ。

ーー赤福に匹敵!相当な人気だったんですね……!

下山 当時は本当によく売れました。しかし、時代の流れとともに、日本でマシュマロは珍しいお菓子ではなくなりました。


130年の歴史をもつ「つるの玉子」。かつては「岡山土産といえば大手まんぢゅう・きびだんご・つるの玉子」といわれる存在だった

ーー今ではマシュマロは身近なお菓子ですよね。

下山 ええ、「つるの玉子」の人気は、戦前が全盛期。その後は、売上が昔ほど伸びなくなってしまいました。そこで「マシュマロ和菓子」というジャンルを世間に再認知してもらおうと、私が考案したのが新たなブランド「つるたま」です。

ーー「マシュマロ和菓子」は、つるの玉子本舗でしか作られていないんですか?

下山 いえ、当店の他にも福岡と愛媛にもマシュマロ和菓子をつくっている菓子店はありますが、全国的な広がりはあまりなくて。

当社でも、「マシュマロ和菓子」と謳っている商品は「つるの玉子」のみでした。ただ、可能性のあるジャンルだと思うんです。

ーー「マシュマロ和菓子」を菓子の一ジャンルとして確立しようと考えたのですね。

下山 そうです。「つるたま」というブランドが話題になれば、「つるの玉子」を知ってもらうきっかけにもなりますから。

「つるたま」を立ち上げるにあたり、デザインは大切にした部分です。デザインは地元・岡山にある西粟倉村のデザイン会社「nuttuo」の鈴木宏平さんにお願いしました。

パッケージだけでなく、ウェブサイトなども含めたブランド全体のプロデュース的な立ち位置で関わっていただいています。


鈴木宏平さんは岡山県内のゲストハウスや土産物店のロゴなどのデザインも手がけている

ーー思わず商品を手に取りたくなる素敵なパッケージです!このデザインにはどのような思いを込めているんですか?

下山 従来のつるの玉子本舗の商品にはない斬新さですね。

土産品を意識した民芸調のデザインだったものをがらっと変え、和のテイストを残しつつも冒険的なくらいシンプルに。「つるの玉子」とは全く違う、新たな「マシュマロ和菓子」のジャンルを代表する商品ラインに仕上げたかったんです。

最高級の素材を使った新ブランドゆえの「直販」という選択

下山 「つるたま」は、ハイブランドな商品ラインに位置付けています。弊社で取り扱う他の商品よりも材料にこだわっているため、価格もワンランク上です。

ーー価格が高いと今までと同じ売り方では難しいような……。

下山 はい。だから販売先は自社店舗とECサイト「BASE」の二通りに絞りました。百貨店やお土産屋に卸す際の手数料をカットするためです。その分、「つるたま」の材料は妥協せず最高級のものを使用しています。

ーー卸売から、直販方式に切り替えたんですね。卸売の場合の手数料は、そこまで大きな負担になるのですか?

下山 一概には言えませんが、それなりの額を販売手数料でもっていかれてしまいます。さらに商品は買い切りではなく委託販売のため、商品が売れなければ返品も発生します。もちろん返品が多いほど儲かりませんし、配送コストもメーカー負担ですから。

ーーそこで、販売構造を変えるというチャレンジを。

下山 直販の場合、返品がないというのはコスト的にメリットが大きいです。最高級の原材料を使い、こだわりぬいたブランドを目指す上での選択でした。

卸売でいきなり広範囲に売っていくのではなく、直販という形でターゲットを絞って、ブランド力を高めながら「つるたま」を売っていけたらと思っています。

新ブランドに懸けたいというチャレンジでもありますね。「つるたま」はデザイン・コンセプト共にセレクトショップとの相性がよさそうなので、売れるところがあれば置きたいなとは考えています。

クラウドファンディングはマーケティング・広報としての側面も

ーーいざ「つるたま」を立ち上げる際に、クラウドファンディングを利用したのはなぜですか?

下山 ぶっちゃけて言えば、開発費・宣伝費含め予算が足りなくなったからですね(笑)。クラウドファンディングで助けてもらおうと思ったんです。

クラウドファンディングがお金を集めるだけの仕組みでないことは、使ってみてわかりましたよ。

ーーどういうことでしょうか?

下山 まず、マーケティングツールとして最適だと感じました。

当初「つるたま」のターゲット層は30代から40代の女性をメインに考えていました。ところが、実際にクラウドファンディングを始めてみると支援してくださるのは男性が多かったんです。これは想定外でしたね。

デザインは女性向けを想定しており変更できませんでしたが、広報面で軌道修正を行ないました。具体的には、Facebook広告のターゲットを男性に変更したんです。これは実際の数字に反映されましたね。

ーー確かに、男性の反応が良いのは意外ですね。

下山 さらに、クラウドファンディングを使ったことで想定外の宣伝効果も生まれました。

CAMPFIRE広報の発信力もあって、「つるたま」のプロジェクト開始の記事がYahoo!ニュースに取り上げられたんです。だからこそ、資金が調達できた部分が大きいのではないかと思っています。

その経験を通じて、クラウドファンディングは「自社製品をほぼ無償で宣伝できる媒体」という価値が大きいのではないかと感じたんです。

ですから、CAMPFIREに興味を持っている人には、クラウドファンディングを資金調達のツールと割り切らずに、広くマーケティングや広報面もカバーしてくれるツールとして使うことをおすすめしたいですね。

区切り線

クラウドファンディングを終え、無事走り出した老舗和菓子店の新たなブランド。
リターンの商品におまけを入れたり、割引制度を設けたりと、支援者をリピーターにつなげる工夫を重ねているといいます。

老舗の看板に甘んじず、現状を打破するアイデアを考え実行し、そこにクラウドファンディングが追い風となる。さらにネットショップを利用した「直販」に挑戦する……。
その飽くなき姿勢こそ、「つるたま」が多くの商品に埋もれず注目された理由ではないでしょうか。

明治創業の日本初マシュマロ和菓子屋から新ブランド『つるたま』誕生
  • 支援総額/目標
    352,000円/300,000円(目標額の117%)
  • プロジェクト内容
    銘菓「つるの玉子」を守り続けてきた岡山の「つるの玉子本補」が、初代が生み出した菓子づくりの原点に帰り、今再び『マシュマロ和菓子』の創作に取り組みます。
つるたま ONLINESHOP
  • 銘菓「つるの玉子」を生み出した130年の老舗菓子店、つるの玉子本舗のショップ。 「マシュマロ和菓子」のジャンルを確立すべく、新ブランド「つるたま」の商品をWEBにて販売している。


※クラウドファンディングにご興味のある方はCAMPFIREにお気軽にご相談ください。プロジェクト掲載希望の方はこちら、資料請求(無料)はこちらから。

ナカノヒトミ

長野と東京を行き来したり、全国各地を飛び回ったりしています。
休日は日光を浴びずに、漫画喫茶に行きたい。

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