コラム

カンボジアの農家をマイクロファイナンスで支援、”動産担保”で貸し倒れリスク低減

日本から飛行機でおよそ7時間。アンコールワットなどの古代遺跡で知られるカンボジアは、いま、アジアの中でも著しい経済成長を続ける国家の一つだ。

アジア開発銀行によると、同国の過去5年間のGDP成長率は実に7%。近年は中国などの海外資本が多く流入しているため、首都プノンペンでは不動産価格も高騰しており、海外の投資家と現地の土地を売却したことで生まれた富裕層が、同国の消費者層の中心となっている。しかし、こうした高い経済成長は都市部に限定されており、都市と地方の経済格差がますます広がっているのが現状だ。

7%の経済成長支える米ドル決済文化

国際通貨基金(IMF)が10月発表した世界経済見通しで、2019年の国内総生産(GDP)伸び率予測も引き続き7%と好調。2位のベトナム6.5%を大きく上回っている。アジア諸国の中でも、中国やインド、インドネシア、タイなど、これまで大きな経済成長を続けてきた国々が景気減速に見舞われている中、なぜカンボジアだけがこれだけの成長率を保つことができるのか。この経済成長を支えているのが、米ドル決済文化だといわれている。

カンボジアでは「リエル」という現地通貨が発行されているものの、日常生活やビジネスシーンで広く「米ドル」流通している。そのため、決済におけるドル通貨の割合は、国全体の決済額の8割近く、預金についても9割超がドル建てと言われる。旅行者はもちろん現地の人々も当然のようにドルとリエルを併用しており、リエルは1ドル以下の少額決済(1ドル=4,000リエル)でしか使われないことがほとんどだ。現地給与の支払いも、公務員を除いて米ドルで支払われている。

主要産業の農業には課題も…

カンボジアの主要な産業の一つとして挙げられるのが、農業。カンボジアでは年間1,000万トンを超えるコメを生産しており、既に生産量は日本の年間生産量である804万トンを大幅に超えている。全土に広がる平地と、メコン川支流の肥沃な土壌環境が実現のカギだ。

カンボジアの人口は全土で1,600万人と日本の1億2615万人の約8分の1。米の生産量が国内消費を超えている結果、世界中にその米を輸出している輸出大国でもある。国際的な品評会で賞を取るような『fragrance rice=香り米』と呼ばれる高付加価値のコメ生産も進んでいる。ただし、面積当たりの生産量は日本の半分程度となっており、品種改良や機械化等の農業技術の向上による生産量増加の余地はまだまだ大きい。例えば、農家を営んでいる人々の中には、耕作面積や、総生産量を把握していない、というケースも珍しくない。


その理由は、ポルポト政権下の内乱にある。多くの成人した知識人が虐殺された歴史があり、平均年齢は24歳と、日本の平均年齢48歳に比べるとかなり若いため、上の世代から教えを請うことも難しい。生産量が分からない農家に、資金を貸し付ける銀行はほとんどない。こうした農家を救う施策の一つが、マイクロファイナンスだ。

中央銀行が審査するマイクロファイナンス制度

カンボジアには、中央銀行が審査するマイクロファイナンス制度がある。国民の借入状況を管理し、スコアリングするシステムを提供しており、各金融機関は統一された情報をもとに与信を行う。

農家を対象としたマイクロファイナンス機関は、農家にトラクターやコンバインハーベスターを購入するためのローンを提供し、農家はそれらの機械を使用し、より広い土地で農業を行い、収入を増加させ、その増加した収入からローンの返済を行うことで、各農家の生産力の向上および国内経済の発展に寄与している。その中の一つが、今回紹介するJCFだ。JCFは考え抜かれた業務オペレーションと「カンボジアの資金需要者とともに発展する」という強い思いのもと、事業運営を行っている。

同社CEOである菊池育朗は約10年前からカンボジアに関心をもち、自身で農業を営むことも経験。約230ha、東京ドーム46個分の稲作農場の管理をしていた。

「現地農家の農業や生活に触れ、カンボジア農業分野のボトルネックが何かを目の当たりにしました。カンボジアに数多く存在する中小規模の農家は、農機や資材さえ購入できればもっと生産性の高い農業を実践できる可能性があります。若い人が多いので、その意欲もある農家がたくさんあるのです。

しかしながら彼らが利用できる金融機関はかなり乏しい。与信評価も高くありません。無担保グループローンを行うマイクロファイナンスも目にしますが、農機を購入できる融資額には至らないのが実情です。全国各地に小規模な農協的組織は存在しますが、日本の農協の様なファイナンス機能は持ち合わせていないケースがほとんどです。結果として今でも手作業による非集約、非効率的な農法にとどまっています。弊社はこれを解決する手段として現地でマイクロファイナンス事業を始めました。」


JCFが理想としているのは「日本式の金融機関」をカンボジアおよび東南アジアで普及させることだ。CEOの菊池氏はオリックスで投融資業務やABC capital(ABCクッキングの金融事業会社)CEOを歴任。COOの泊氏もSMBCで法人営業を担当したのちにカンボジアに移住するなど、日本における金融機関で豊富な経験を持つ。農家にとって最適な返済方法を提案するために、審査の際に現地に赴いて各農家の生産量、経済力を査定し、収穫時期を見込んだ無理のない返済計画を提案するようにしている。

農家のローン返済が困難になった際には、農機を売却して返済が行えるような体制を構築している。また万が一の貸倒れに備えて、農家の所有する農機に動産担保(貸し倒れの際は農機を担保として回収する方式)を設定している。GPSによる農機管理と遠隔からのリモートロックにより動産担保の保全を図っている。これまでに約800件の融資を実行してきたが、2019年10月時点で貸し倒れは一件も発生していない。

同社は、カンボジア全土で6,000のフランチャイズ加盟店を抱える資金移動専門銀行のWingと提携し、銀行がないエリアでも、その加盟店を窓口として返済する資金決済サービスを可能にしている。カンボジア全域でマイクロファイナンス事業を展開している同社は、2019年12期に売上高148万米ドルで黒字化する計画だ。

紹介したプロジェクト

CAMPFIREグループ会社、CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL運営の「CAMPFIRE Owners」では、上記プロジェクトの支援を募集しています。

プロジェクト名:カンボジア農家支援ファンド
募集金額:50,000,000円
URL:https://owners.camp-fire.jp/funds/24
問い合わせ先:https://owners.camp-fire.jp/contacts_select

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