インタビュー

「岐阜の秘境・西和良村の魅力を発信したい」フードトラック 祠が語るクラウドファンディング成功までの道のり

クラウドファンディングにはさまざまなメリットが存在するが、その中の一つに「どんな場所にいても支援を集められる」「場所を言い訳に夢を諦めなくてもいい」があるだろう。

そんなメリットを活かし、夢への一歩に近づいたプロジェクトがある。地域活性とおいしいジビエを届けたいという想いから発足された『ジビエを身近に手軽に!山奥の村からフードトラックでお届けしたい!』だ。

プロジェクトを実施したのは、土地の90%が山林に囲まれた岐阜県郡上の秘境「西和良村」に住む岡崎修一さん。本稿では、岡崎さんがクラウドファンディングを活用した背景と支援を集めるために行った工夫に迫る。

プロジェクトデータ
  • プロジェクト名
    ジビエを身近に手軽に!山奥の村からフードトラックでお届けしたい!
  • プロジェクト目的
    フードトラックの製造資金調達、活動の周知
  • 募集期間
    2021年1月25日~2月27日
  • 調達金額
    2,836,500円
  • パトロン数
    312人

移住者ならではの視点で「西和良村」の魅力を発信したい

岡崎さんが西和良村で生活を始めたのは、今から3年前。もともとは岐阜県の隣・福井県で生まれ育ち楽器屋で働いていたという。なぜ、秘境と言われる西和良村への移住を決意したのか。そこには「ジビエを活用した地域おこしをしたい」という思いがあった。

「ずっと“田舎”に住んでいたのに華々しい世界にばかり目が行き、“田舎”の良さが理解できていないとコンプレックスを持っていました。なのでまずは一次産業を学ぼうとたまたま縁のあった牧場で働き始めました。その牧場はイノシシが土地を荒らす“害獣”が酷かったので、そこでハンター(猟師)になったんです。ハンターになってみて知ったのは、福井県はシカやイノシシなどの獣を頻繁に獲っているものの、埋没か火葬・自家消費しか処理方法がないことでした。それはとてももったいない、サスティナブルではないなと感じていたとき、岐阜県で『ジビエを活用した地域おこしをしませんか?』という求人を見つけて移住を決意しました」

移住した岡崎さんは西和良村の魅力に気づいていく。一方、少子高齢化が進む中での人口の過疎化、秘境の地であるがゆえに生き届かないインフラなど田舎ならではの苦労や悩みも感じていた。「移住者であるからこそ、外からの目線で西和良村の魅力を発信したい」と考えた岡崎さん。これまで、ジビエを活用したキャンプを行っていた。しかし、手ごたえはあまり感じていなかったそう。

「獲った獣を参加者のみんなでさばくようなキャンプをやっていました。ただ、村の人たちに自分の活動を周知していくことって難しいんですよ。キャンプに何人来たよと言ってもピンときていませんでした」

西和良村の住民の多くはご年配の方たちだ。新しい活動に対する理解を求めることは難しさもある。そこで考えたのが、ジビエを活用した食を全国に届けるフードトラックだった。そして、この取り組みを機にクラウドファンディングの活用を決意した。

「フードトラックの資金を集めたい思いはもちろんですが、同時に村民の方たちへの信頼を得たいという思いもありました。自分の取り組みのニーズが数字として可視化されることによって、『意外と需要があるんだ』『こいつになら任せられる』と思ってもらえるのではないかと考えました」

ターゲットを「県外」「住民」に分けたPR

県外へは西和良村の魅力を、西和良村の方たちへは岡崎さんの思いや取り組みのニーズをそれぞれ発信する必要がある。クラウドファンディングの実施にあたって、ターゲットを「県外」「住民」に分けてPRを実施した。

●SNSを活用した「県外」へのアプローチ

岡崎さんは趣味のオンラインゲームが高じて、ゲーム世界の要素を取り入れた独自のキャンプ企画を実施していた。ゲームで登場する武器をつくったり、獣の革でラグをつくったりし、「#ヒカキャン」「#クルザスサバイバル」といったハッシュタグをつけTwitter上に投稿していた。

「オンラインゲームで友だちになった人たちやキャンプでの活動で知り合った人たちに向けて、Twitter上で自分の活動のこと、ジビエのこと、地域の魅力を以前から伝えてきました」

これまで培ってきた自身の仲間への発信を第一歩とし、クラウドファンディング開始直後にツイートを投げたところ、個人アカウントでありながら380リツイート・400ファボの反応が。
また、プロジェクト終了までは定期的にTwitterでプロジェクトに関する発信を続けていた。

●「住民」へのアプローチはアナログで

年配の方や行政の方たちはSNSの活用に疎く、ネットを活用するだけで身構えてしまう人も多くいるという。情報を受け取る方法は新聞やテレビといったマスメディアであるため、Twitterやプレスリリースでいくら発信をしても情報を取ってもらうことは困難だ。

そういった方たちに向けては、地元のローカル誌に掲載したり、チラシを配ったりするなどアナログで地道にお願いの活動をしていった。

「ネットに慣れている方はライトに発信した方が届きやすいのですが、ご年配の方や行政の方たちは堅実的な内容や見え方を求められます。そういった方たちにも納得できるPRの内容を意識しました。なるべく横文字を使わない、とか。インフルエンサーの話しをしているのに気づいたらインフルエンザの話しになっているようなことが普通にあるので(笑)。クラウドファンディングという言葉自体も知らないから、“個人の方たちに応援いただく仕組み”のような説明をしていました。そこは少し苦労しましたね」

ターゲットに合わせて訴求方法や訴求内容を変えていくことで、結果的にクラウドファンディング開始一日で目標金額を達成。SNSを活用したことにより「県外」の方たちから支援が多く集まった。この結果を受け、「住民」からの認識も高まり、最終的には西和良村の方たちからも支援が。

「金額として可視化できたことで、活動に取り組む根拠を見せられましたし、どのような方法で地域に貢献したい・進めていきたいという意見が通りやすくなりました」

成功したプロジェクトを参考に、独自の工夫も

また、本プロジェクトが目標金額を達成した理由はPRへの工夫だけではない。プロジェクトページに対するこだわりやリターンへの工夫も支援を集められた要因の一つだ。

プロジェクトページを作成するに際しては、同じ岐阜県のプロジェクト『岐阜県・旧春日村の薬草を使った完全無添加の「ぎふコーラ」を作りたい!』を参考にしていたという。

「ぎふコーラさんとは以前から面識があったため、事前に一度お会いしてクラウドファンディングについていろいろお話を伺いながら進めていきました。文章の流れ、画像の入れ方、他人を巻き込む姿勢などを参考にしています」

●「ぎふコーラ」から参考にしたこと

文章の流れ

「ジビエで地域を持続させていく」をテーマに置いた上で、ぎふコーラのページを参考に「なぜ」「なにを」「どうやって」など5W1Hで構成。

画像の入れ方

写真を入れるのはもちろんのこと、見出し部分を文字ではなく画像にすることで読みやすい流れをつく。

他人を巻き込む姿勢

ぎふコーラは「プロジェクトに協力くださった方々の紹介」としてロゴを掲載しており、本プロジェクトでも同じように地域の方や岡崎さんのSNS上での友人などの協力を仰いだ。プロジェクトページには協力者のロゴを、活動報告には詳細な紹介記事を掲載

リターンに関しても、ぎふコーラの他人を巻き込む姿勢を参考に地元の方を含め多くの方たちに協力してもらったそう。

「試食用フランクのリターンは西和良村にあるお肉屋さんに、クラウドファンディング限定グッズのリターンは岐阜県郡上市にある『CloveR』さんというお店にご協力いただきました」


※限定グッズ

同時にほかのプロジェクトを参考にするだけではなく、岡崎さんなりに思いを届けるための工夫も伺えた。

画像はジビエを身近に感じてもらうため、しずる感などを意識した写真やポップな印象を与えるデザインをデザイナーに相談しながら作成。リターンに設定された「車載ネームボードへのお名前掲載」にも岡崎さんなりの思いが詰まっていた。

「県外の方からご支援いただけそうという算段があったものの、最初は県内での移動販売がメインになってくるだろうし、ご支援いただいても気軽に遊びに来ることは難しいだろうと。利用券などをリターンに置いても意味がない、どんなリターンならみなさんが支援してよかったと思えるのかを考えました。結果思いついたのが“お名前掲載権”でした。いつかはキッチンカーで会いに行けるでしょうし、であれば支援してくださったみなさんの名前を一緒に乗せて会いに行きたいなと思ったんです」

クラウドファンディングの成功が活動への自信に繋がった

目標金額の100万円を超え、280万円以上を達成した本プロジェクト。この成功が岡崎さんの活動の自信へと繋がった。

「僕の活動を知っている人からの支援はもちろん、活動を知らない人からの支援が入ったときは自分の活動が認められたような気持ちになりました。クラウドファンディングは夢を叶えるスタート地点に立つ仕組みであって、クラウドファンディングが終わってからが本番だと思います。だけど、夢を叶えるための裏付けとなる、やっていけそうだなと自信が持てるツールであるとも感じました」

クラウドファンディングで夢を叶えるためのスタートラインに立った岡崎さん。地元の方たちへの周知がこれまで以上にやりやすくなったそう。今年5月に「キッチンカー祠」の開業を目指し、現在も準備を進めている。

「おかげさまで支援金額が目標の2倍以上を上回り、県外へ行ける設備を整えることができます。西和良村は山奥でありますし、ご時世的にも遊びに来ていただくのは難しい状況です。キッチンカーであれば、僕らから支援していただいたみなさんへ会いに行ける。日本全国に西和良村・ジビエの魅力を伝えていけるように準備を進めていきます」

最後に、岡崎さんから支援者の方たちに向けてメッセージをいただいた。

「CAMPFIREでみなさんと繋がりを持てたこと、本当にありがたく思います。多くの方に“お名前掲載権”付きのリターンを選んでいただきました。みなさんの名前と一緒にこれから地域やジビエの魅力を伝えていけることはとても誇りです。少し時間はかかりますが、必ずみなさんのもとに自分たちの感謝の思いを乗せてリターンをお届けします。ご支援本当にありがとうございました!」

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阿部 裕華

取材好きなフリーライター/編集者。WEBメディア中心に編集・企画・進行管理(たまに撮影・デザイン)もやります。アニメ・コンテンツビジネス・映画・音楽(主にBUMP)が大好きです。

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