実施事例

目標達成率1300%! 斬新な漬物瓶プロダクトが食卓を変える

現代のライフスタイルにマッチした、新しい漬物瓶「Picklestone」。冷蔵庫にペットボトルなどと一緒に立てておけるサイズ感とスタイリッシュなデザインで、従来の概念を覆した漬物瓶です。

製作資金を募ったCAMPFIREのプロジェクトでは開始5日目にして当初の目標の3倍にあたる100万円が集まり、支援総額は400万円に達しました。

今回のプロジェクトの仕掛け人は、大手広告代理店のデザイナーの顔を持ちながら、料理に関する活動を精力的に行う田中友規(たなか・とものり)さん。

プロダクトのネーミングからデザイン、宣材写真まで行き届いた“目に見える”完成度の高さには、今回の結果も納得できます。しかし、お話を伺ううちに功を奏したのはむしろ水面下の作戦だったのではないかと思うようになりました。

目標達成率1300%という衝撃の数字を叩き出すに至った戦略と、田中さんの内に秘めた情熱に迫ります。

食卓に「漬物」のある暮らしを!新しいスタイルの漬物瓶【Picklestone】
  • 支援総額/目標
    3,988,000円/300,000円(目標の1329%・420人が支援)
  • 内容
    新しいスタイルの漬物瓶「Picklestone」の製作費集め・販売

目標達成率1300%を叩き出した「“枯渇”と“欲しい”のキャッチボール」

佐々木

目標達成率1300%には、ご自身もかなり驚かれたんじゃないですか?

田中

正直、ここまで売れるとは思っていませんでしたね。

佐々木

ズバリ、達成の要因は何だったと思いますか?

田中

そうですね……一概には言えないのですが、買いたくなるための気持ちの戦略は立てていました。僕の本業は大手広告代理店のデザイナーで、プロダクトデザイナーともよく話をするんです。そこで聞いたのが、職人さんが手仕事に集中してしまって、注文がきてもすぐにレスポンスができないことが多々あるということ。お待たせしている間に、お客さんも買う気が失せてしまうというんですね。

佐々木

手仕事だと、どうしても時間がかかりますもんね。

田中

かと言ってプロダクトが余り過ぎても、いま買いたい!っていう気持ちが強まりませんよね。なので、少し先回りして在庫はゼロにしない、けれどあと少しで売り切れる!という状態を心がけました。職人の生産力とにらめっこしながら、ライブ感をもって少しずつ状況をコントロールするようにしたんです。つまり「在庫の状態と『欲しい!』が叶う満足度のバランスを保つ」という作戦です。職人さんと毎日のように相談しながら、支援が集まるのに応じて30本刻みで増量していく戦略は事前に立てていました。

佐々木

そんなに綿密に計画を立てられていたとは! 製品化の計画もかなり前からされていたんですか?


大阪城築城や、東京1964の聖火台などにも使われている日本が誇る香川県産最高級の「庵治石」を使用

田中

いえ、構想し始めたのが昨年の12月です。そこから素材選びと組み立てに奔走しました。石は香川の「庵治石」、木は天然ヒノキにナチュラルワックスを施して、紐は完全無添加の麻紐にしよう……と。ようやく製品化の目処が立ったのは2017年の5月でしたね。

佐々木

ということは、クラウドファンディングが始まった月ですよね? どうしてそんなに急ぐ必要があったんですか?

田中

僕がプロデュースしている「COOK BOSS」という素人料理バトルのイベントを6月16日に開催することが決まっていたので、クラウドファンディングの最終日をどうしてもその日に設定したかったんです。というのも、イベントが終わるのは21時頃。イベントの最後に告知をして、クラウドファンディング終了まで数時間を残して駆け込みの申し込みで完売、というストーリーを描いていたので。

佐々木

タイトなスケジュールにも関わらず、綿密な計画ですね……。でも、数あるサービスの中からCAMPFIREを選んだ理由は何ですか?

田中

ファンディング終了時刻と「COOK BOSS」イベント終了時間のタイミングを合わせるのが、話題を最大化する戦略だと思っていました。それに間に合わせるために、とにかくすぐにクラウドファンディングをスタートしたかったんです。なので、承認まで半日程度で始められるCAMPFIREを選んだのは必然だったんですよ。素早くリターンの追加承認をしてくれる運営サイドの対応も、本当にありがたかった。

佐々木

この戦略性も、やはり広告代理店でのスキルが活かされているんでしょうか。

田中

めちゃくちゃ活かされていると思います。今までクライアントのためにやってきたことを、自分のために、自分のお金でやってみたというか。自分に落とし込むと、仕事と同じようにはうまくできないこともあります。でも、トライ&エラーをしながら色んな仕事をしてきたので、その積み重ねが今回のクラウドファンディングにも活きたんじゃないかな。

自分がルールになってから生きるのが楽になった

佐々木

広告代理店で働きながら料理に関する活動もされていますが、そんなユニークな働き方を始めるきっかけは何だったんですか?

田中

料理を始めたきっかけは、妻と付き合い始めたことですね。彼女は同じ会社の先輩で、職種も同じなので、家事負担はお互い好きな分野で半々にしようと決めたんです。彼女は掃除と洗濯、料理は僕がすることに。二人の共通の趣味が食べ歩きだったこともあって、一緒に行っておいしかったお店のメニューを自宅で再現してみたり、普段の料理を僕が担当するようになったりしているうちに、料理が身近になっていきました。

佐々木

わぁ~、いい話だなぁ(笑)。それからどんな活動を始められたんでしたっけ?

田中

シンガポール料理に特化したブログをスタートしました。シンガポール料理にフォーカスしたのは「やるからには結果を出したい」と思ったからです。マーケティングしていくうちに、シンガポール料理の競合がいないことに気づいたので。ただ、シンガポール料理店をまわっていくうちに知見が貯まって、どんどんハマっていったのは事実です。最終的には、北海道から沖縄までのシンガポール料理店を全制覇しちゃいましたから。


活動の礎となった、シンガポール料理専門ブログ「海南鶏飯HUNTER」

田中

それからシンガポールに行って本場の味を一から勉強した後、料理教室と、企業向けのケータリングを始めました。最初は10~20人規模だったのが、100人規模のパーティーのオーダーが来るようになって。冷めた料理を出すのが嫌で、オーダーを聞いてその場で作って振る舞う「ライブクッキング」をしていました。

佐々木

もはや本業かと見紛う活動スケール!


ケータリング事業は、俳優・市原隼人さんのファンミーティングのプロデュースをするまでに成長。市原さんと共に100人のファンにライブで料理を振る舞った。

田中

その後は「.cook」という、料理男子だけのコミュニティを作りました。料理教室を開いてみて気づいたんですけど、男性の生徒さんが1割くらいしかいないんですよ。でも、その人たちと話すと面白くて。女性は料理に効率性や採算を求めるけど、男の人は「このたまり醤油じゃなきゃダメなんだよ」みたいな感覚をわかってくれる。1番共感しあったのは「せっかく作っても、奥さんにはこのこだわりは伝わらないよね!」って(笑)。

佐々木

よく聞く夫婦のすれ違いのあるあるですね(笑)。

田中

そうそう! そんな共通項を分かち合えた瞬間に部活みたいになっちゃって。そのうちに料理男子専門で事業化までしちゃいました。

佐々木

すごい! メディア出演や本の出版の話もドシドシ来たんじゃないんですか?

田中

ブログを書き始めたころから話はいただいていたんですよ。ただ、僕がマニアックなのに対して、出版社としては冊数を売らなきゃいけない。だから主婦の方が喜ぶように「もっと簡単なレシピにできませんか?」という打診があったんです。ただ、レシピを変えることにすごく違和感を持ってしまって。だから、人に引っ張り上げてもらうのに期待するのはやめて、自分で全部やろうって考え方を変えたんです。

佐々木

でも、会社員として働きながらここまでの活動をされるなんて、かなりの信念を感じるのですが。

田中

僕も悩んだ時期はありましたよ。本来ならば、本業のデザイナーとして身を立てなきゃいけないわけですから。けれど広告って、裏方のクリエイティブなので、作った広告はクライアントのもの。たくさんの天才の中でもTop of topの人間が作るもの以外は「自分の作品」とは呼べない。その世界で、到底自分は勝てる気がしませんでしたから、どうしたらいいんだろうって。だから、そんな僕の悩みを一流のクリエイターに聞いてもらうという「堂島デザイン会議」というトークイベントも企画していました。

佐々木

え、悩みを聞いてもらうイベントをご自分で?

田中

はい(笑)。お招きしたゲストの中で僕が一番影響を受けたのは、美しいデザインの家電で一時代を築いたamadanaの熊本浩志社長でした。彼は新卒で入った家電メーカーを3年で辞め、27歳でベンチャーを立ち上げて、「家電市場の0.1%のシェアを取る」という非常識としか思えない宣言をあっという間に達成してしまうような人で。

佐々木

業種にもよりますが、家電市場全体の0.1%とはすごい額ですよね。

田中

そんな熊本さんがなし得てきたこと一つ一つから「俺がルールだ」という姿勢が感じられて。「あぁ、この人みたいになりたいなぁ」と思うと同時に、すごく楽になったんですよ。「自分のルールの上でやれば、誰に何を思われてもいいんだ」と思ったら肩の荷が下りて、24時間ある時間を全部自分のために使えるようになりました。そう思ってから、人が集まってきて、ビジネスも生まれて、僕の書いたストーリーでいろんなことが動き出したんです。

PicklestoneをiPhoneに? 「漬物瓶プラットホーム」で広がる今後の展望

佐々木

そういえば、クラウドファンディング中にPicklestoneがTVで取り上げられましたよね?

田中

そうなんです。支援者の方がPickelstoneを使って手作りの漬物を楽しんでいる様子を紹介するという1分くらいの枠だったんですけど、放送直後にサーバーがパンクしちゃって。その番組を観て購入してくれた方々は、ぼくよりずっと年上の方が多かったことや、「ブラジルに単身赴任している夫に送ってあげたい!」という声もあって、自分の感情がテレビを通じてもちゃんと伝わったんだなーって思って胸が熱くなりました(笑)。

佐々木

ブラジルで何を漬けるのか気になります(笑)。そんな反響もあって急遽BASEでも販売することになったんですか?

田中

そうですね。テレビで取り上げられた後も、やはりスピードが決め手でした。欲しいと思った瞬間に買える環境があるようにしないと。それから、CAMPFIREで感じたフレンドリーな空気感がBASEにも根付いていて、ビジネスライクな関係ではなく、顔も見たことない運営の方々に仲間意識みたいなものを感じちゃって。クラウドファンディングは終わっちゃいましたけど、PicklestoneをBASEで8640円(税込み)+送料で売っています。

佐々木

Picklestoneは今後BASEでの販売がメインになるわけですが、どんな展開をしていくんでしょうか?

田中

実は今「漬物プラットフォーム」という考え方を軸に展開していこうと思っていて(笑)。わかりやすく言うと、PicklestoneをiPhoneみたいにしたいな、と。

佐々木

PicklestoneがiPhone!? どういうことですか?

田中

たとえば、僕はスリランカにスパイスを買い付けにいってしまうくらいカレーが好きなんですが、福神漬け用の野菜とカレーのスパイスと一緒に販売すれば、Picklestoneを持ってる人が皆で同じ体験をできて、繋がれる。小麦粉とソーセージを作るキットと一緒に、キャベツとフェンネル、マスタードシードをセットにすれば、手作りザワークラウトとホットドッグが食べられる。そんな風に、僕が楽しい、美味しいと思う料理を配信できるプラットフォームがPicklestoneなんです。Picklestoneは「漬物ポット」なんですけど、何を入れてもいいわけですよね。iPhoneにいろんなカバーやアプリでカスタムするように、いろんなものと掛け合わせて届けられたら最高だな思っているんです。

佐々木

そんな面白いアイデアってどうやった思いつくんですか? ユーザーからの声とか……?

田中

僕が感じて信じたことがルールなので、ユーザーの声を指標にはしていません。僕が届けたいと思ったモノには妥協したくないんですが、質を上げるとどうしても原価が上がってしまうこともあります。そんな場合は、それでも「欲しい」と言ってくれる、趣味におけるハイエンド層向けに販売していきたいと思っています。BASEを中心に発展のしがいがものすごくありますけど、ありすぎて手が付けられませんね。

佐々木

芯が通っていますね。これからますます楽しくなりそう!

田中

楽しいけど、モノを作って、誰かの手元に届けるってめちゃくちゃ大変なんですよ。僕は普段サラリーマンなので、Picklestoneに割ける時間は、仕事が終わって家族が寝てからの深夜と土日だけ。一時期は、寝不足と夏の暑さで鼻血出るかと思いましたもん(笑)。だから、他の良い感じのインタビュー記事みたいに「みんなやろうぜ」とは言えない。ただ、僕はamadanaの熊本さんみたいに、誰が何と言おうと自分のやりたいことをして、感情をフルに使ったモノづくりをしていきたいと思っています。変にクールだと人がついてこない。自分が本気で面白いと思うものを本気で面白いと思いながら作っていきたいです。

区切り線

どのフィールドでも頂点を掴むには既存のルールに則って勝負をしなくてはならず、どんなに頑張ってもTopを名乗れる人はごくごく少数。枠に“ハマれる”よう、人目を気にしながら自分を小さく小さく押し込めていく毎日に、息苦しさや不安を感じている人は多いのではないかと思います。

そんな世の中の大きな流れに逆行する形で、自分が面白いと思うものを全力で突き詰めることで既成概念を覆し、新しいモノを生み出している田中さん。“自分がルールになる選択肢”を体現している彼の存在自体に勇気づけられる人はたくさんいるでしょう。

すべての人がルールになる必要はありませんし、なってみたところでどれだけの人が付いてくるかはわかりません。それでも、一人ひとりの徹底したオリジナルを他の誰かが面白がってくれる余地はある。そう考えるだけでいつもより主体的に、希望を持って生きていけそうな気がしました。

picklestone official
  • テレビでPicklestoneが紹介され、反響を呼んだため、急きょBASEを利用して立ちあげられた公式オンラインショップ。現在は「picklestone」(8,640円+送料)と「picklestoneガラスポッド」(3,780円+送料)のみの販売だが、今後もラインナップが増える見込み。

プロフィール
田中友規(たなか・とものり)
シンガポール料理研究家。大手広告代理店デザイナーという本業を持ちながら、自身の料理教室を運営。
また料理男子コミュニティ[.cook]のプロデュース、料理バトルイベント「COOK BOSS」統括プロデューサー、クッキングライブ「Live kitchen」統括プロデューサー、キッチンツール企画「.cook Products」プロダクトデザイナーとして活動する。

日本ではまだ馴染みの薄いシンガポール料理の魅力をブログ執筆や料理教室を通じて、啓蒙している。日本ではまだ珍しい食材や調味料も、調達先から開拓しつつ、日本にいながら本格的な味を再現できるように考案されたメニューを作り続けている。家庭では一児の父でもあり、親子の食育、男の家事・育児参加、食を通してのコミュニケーションを広げる活動にも力を入れている。



※クラウドファンディングにご興味のある方はCAMPFIREにお気軽にご相談ください。プロジェクト掲載希望の方はこちら、資料請求(無料)はこちらから。

佐々木ののか

フリーランス書く人。
最近はインタビュー・対談構成をメインに、展示や動画制作のディレクションを行うなど活動の守備範囲が広め。
専門分野は「家族と性愛」

同じカテゴリーの記事

more

同じタグの一覧

more