女性向けサプリメント『Ubu(ウブ)』の生産者が語るクラウドファンディング 2つのメリット

女性(Female)が抱える健康や美容の課題を解決するテクノロジー(Technology)、通称「FemTech」。調査会社のAbsolute Markets Insightsによると世界の「FemTech」市場は2027年までに5兆円を超える規模に成長すると予想されている。昨今、注目の市場なのだ。『Ubu』を含めた女性のウェルネスケアにまつわる事業展開をしているMEDERI株式会社の代表取締役社長・坂梨亜里咲さんへインタビュー。すると、クラウドファンディングでプロジェクトを実施するメリットが多く語られた。
そして、CAMPFIREにも「FemTech」に関連したプロジェクトが増加している。中でも多くの支援を集めたのが、子どもを望む女性へ向けたサプリメント『Ubu』だ。本プロジェクトは「FemTech」領域でありながら、男性向けのリターンを設定するといった仕掛けも。性別を問わず支援を集め、支援総額は目標金額の200万円を超えた。



プロジェクト成功の裏側に迫るべく、『Ubu』を含めた女性のウェルネスケアにまつわる事業展開をしているMEDERI株式会社の代表取締役社長・坂梨亜里咲さんへインタビュー。すると、クラウドファンディングでプロジェクトを実施するメリットが多く語られた。

プロジェクトデータ

プロジェクト名: 【日本初】子を望むすべての女性へ向けたサプリメントボックス「Ubu」先行会員募集
プロジェクトの目的: 認知拡大を目的としたマーケティング戦略
募集期間: 2020年3月3日~2020年3月31日
支援総額: 2,638,828円
支援者数: 156人
プロジェクトURL: https://camp-fire.jp/projects/view/229841

女性向けサプリメント『Ubu』がクラウドファンディングを活用した理由

「自分の可能性を自覚し、自由に生きる女性で溢れる社会へ」をビジョンに持つMEDERIは、2020年3月からウェルネスケアのプロダクト事業をスタート。プロダクト第一弾となったのが『Ubu Supplement』だ。女性の妊娠する力「妊孕力(にんようりょく)」の大切さを伝えるため、クラウドファンディングを活用し、『Ubu Supplement』の先行販売を開始した。


Ubu(ウブ)の語源は、「初 / 産」Ubu(ウブ)の語源は、「初 / 産」

 

マーケティング戦略のためにクラウドファンディングを活用

しかし、「最初からクラウドファンディングの実施を考えていたわけではなかった」と坂梨さんは話す。すでに自己資金で『Ubu』の製造は完了していたため、クラウドファンディングというサービス特性に反すると考えたそう。そんな坂梨さんが実施に踏み切ったのは、マーケターからのアドバイスだった。

「クラウドファンディングは新しいプロダクトをつくる人の思いに共感・支援し、代わりにリターンを受け取るという座組という認識でした。ところが、今後の『Ubu』のマーケティング戦略を考えるなら、クラウドファンディングが一番効果的ではないかとアドバイスをもらったんです」

坂梨さんの不妊治療をしていた経験から始まった『Ubu』は、多くのこだわりが詰まったプロダクトだ。さらに、「良いものをユーザーに負担のない金額で届けたい」という思いも相まって、マーケティング費用を加味していない販売価格を設定していた。

「あまりお金をかけず、他社製品との違いや『Ubu』そのものの魅力をクラウドファンディングで伝えられると知り、前向きに実施を考え始めました。私だけではクラウドファンディングの活用に辿り着かなったと思います」

そして、数多くのクラウドファンディングから『Ubu』に一番合うサービスを比較検討。その中で、CAMPFIREを選択したのは「一番思いを伝えられそうだった」という。

「ページのUIや掲載されているプロダクトはサービスによって全く違います。今回のプロジェクトは、プロダクトに込めた思いを伝えて支援を集めたいという目的があったので、CAMPFIREが一番合っていると感じました」

“正しい知識”で“多くの人”の支援を意識した【本文】と【リターン】

「思いを伝えたい」とクラウドファンディングの挑戦に踏み切った坂梨氏。【本文】と【リターン】のそれぞれにこだわりを入れ込んだ。

【本文】安心して支援してもらえるよう、正確な知識を伝える

『Ubu』のプロジェクトページ冒頭に書かれたのは、プロジェクトの思いや実施の経緯ではなく「女性の年齢による妊孕力の変化」についての説明だった。

「多様な生き方が認められてくる時代の変化はあっても、女性に備わっている生殖機能の特性は変化しません。いつか子どもを産みたい、今の時代はいつ産んでもいいでしょ、とやんわり妊娠・出産のことを考えている人は多いですが、それは間違いで。一般的に、妊孕力は年齢とともに低下していきます。それを一番にお伝えしたかったんです」
プロジェクトページ本文内で実際に使用されたグラフプロジェクトページ本文内で実際に使用されたグラフ

 

文章だけでなく、グラフを用いて、数字とともに説明していった。また、サプリメントに配合されている成分も細かく記載されている。これは「安心して飲んでいただきたい」という考えからだった。

「センシティブな領域なので、どんな成分が入っているかはしっかり伝えようと思いました。プロジェクトを掲載する際には、CAMPFIREの事前調査もかなり厳しく、とても慎重に掲載されていると感じました」

クラウドファンディングの特性上、これまでにないプロダクトを掲載することが多い。そのため、ヘルスケア関連のプロダクトは掲載前には必ず「どんな成分が配合されているか」「どんな工場で生産されているか」など、証拠となる書類の提出義務がある。審査の厳しさから「出稿する側としては面倒に感じる部分もありますけど」と笑いながら前置きした上で「(実際に支援する)1ユーザーの立場だと安心できますよね」と語った。

【リターン】当事者に限らず支援を促すためのプラン内容

妊娠・出産を考える女性向けのプロダクトという印象のある『Ubu』だが、本プロジェクトの目的は多くの人へ妊娠・出産における“正しい知識”を訴求することだ。そのため、プロダクトの思いに賛同した人向けのプラン、メンズ向けのプラン、法人向けプランなど、リターンのプランに幅を持たせた。

「当初のリターンは、『Ubu』の一商材だけを設定していました。プランといっても、『〇ヶ月セット』をいくつか置いていただけです。でも、CAMPFIREのキュレーターさんからもっと商材に頼らないプランや男性をターゲットにしたプランもあるといいのではないか、と。そこで、過去の事例を参考にリターンのプランを考えていきました」


今はサプリメントを使う予定がないけど、応援したい人のために500円から支援できるプラン、女性のみならず男性にも妊娠・出産に興味を持ってほしいという思いからパートナーや家族に贈るためのギフトプランを設定。結果、「商材以外のプランを選択してくれた人が想定以上だった」と坂梨さん。

「500円のプランを選択してくださった方には、オリジナルステッカーをお渡しする内容にしています。当初は正直、ステッカーだけで500円も払う人がいるのかな?と思っていました。でも、実際にはステッカーでもいいんだ!って(笑)。男性からも想定以上のコメントが寄せられたので、プランの幅を持たせることは非常に重要だったと感じています」

プロジェクト終了後も感じるクラウドファンディングのメリット
3月3日にプロジェクトページをオープンし、24時間で目標金額を達成。3月31日のクラウドファンディング終了日までのおよそ1ヶ月で、支援総額は260万円、支援者数は150人を超えた。実施していた当時を振り返り、坂梨さんはクラウドファンディングのメリットを語った。

● 応援コメント機能が励みに

プロジェクトページの支援者タブを開くと、支援者からのコメントが確認できる。このコメントにとても励まされたと目に涙を浮かべながら坂梨さんは話してくれた。

クラウドファンディングは支援を受けられるだけでなく、良くも悪くもプロジェクトの価値が明確に可視化される。不安に駆られてプロジェクトページ公開前の1週間はあまり寝付けなかったという坂梨さんだが、24時間で多くの支援とコメントが寄せられたことで「クラウドファンディングを実施して良かったと思いました」と話した。

「支持されるかすごく怖かったんです。自社でPRをするのとは違い、多くの人が見るプラットフォームに公開するので。プロジェクトページ公開日にはページをずっとリロードしていました(笑)。でも、そのたびに支援者のみなさんのコメントが一つひとつリアルタイムで増えていく。女性のコメントはもちろんですが、男性からも『奥さんに教えてあげようと思います』というコメントがあり、男性の意識も変えられたなと。

自分のやってきたことが認められたようで、とても泣かされました。今も励みになっていますし、今後も励みになると思います」

クラウドファンディングを実施して半年経過し、MEDERIも新しいフェーズに突入している。事業で躓くことがあったときはプロジェクトページを覗いて初心に帰るのだ、と目に涙を浮かべながら笑顔で話してくれた。

● クラウドファンディング終了後もマーケティングに活用できる

プロジェクト実施期間が終了しても、プロジェクトページは残り続けるのもメリットの一つ。募集終了後もプロジェクトページから集客に繋がるのだ。

「3月にクラウドファンディングを実施し、4月にEC販売をしようと思っていたのですが、諸事情によりEC販売が予定から1ヶ月遅れてしまったんですよ。EC販売が開始されるまでの期間、プロジェクトページを見て、お問い合わせをしてくださる方も多くて。公式ページが完成した後も、プロジェクトページから公式ページへ飛べる導線もあります。プロジェクトページで思いを知り、購入に進まれる方もいるので、本当にありがたいです」

既存顧客へ抱えていた思いを伝えられ、新規顧客にもアプローチが可能。加えて性別関係なく訴求ができる。「手数料以上の価値がある」とクラウドファンディングの価値を坂梨さんは熱弁した。

「クラウドファンディングのサービスを選ぶ際、手数料で判断する人もいます。CAMPFIREは支援総額の17%(2020年10月時点)の手数料が設定されていますが、すごい安いと感じていて。普通に広告を打つと費用対効果を感じないこともありますが、CAMPFIREはコスパがすごく良いです。プロダクト認知拡大の初期のマーケティングには持って来いだと思います。新しいプロダクトができたら、毎回クラウドファンディングをやりたいくらいです(笑)」

「ターゲットを絞り込まずに利用してほしい」

市場規模拡大に伴い、クラウドファンディングでも「FemTech」領域のプロジェクトは増えてくるだろう。今後、「FemTech」領域のプロジェクト実施を考えている人に向けて、坂梨さんからアドバイスを聞いた。

「私はターゲットを絞り込まなくていいと思います。女性のプロダクトだから女性に届けるのは真っ当ですが、せっかくさまざまな人が利用しているサービスなので、可能性を最大限に生かした方がいい。ターゲットを絞り込まずに、ページやリターンを用意してみるのがオススメです」

また、支援者のターゲットを広めた結果、今後のプロダクトのヒントにも繋がったそう。

「支援者コメントには、結婚されて子どもがほしいと考えるメインターゲットから性別を問わず独身の方までいろいろな意見をいただくことができました。それがヒントとなり、『Ubu』の打ち出し方や次回のプロダクトに繋がることも。ターゲットを決めつけずに挑むことで、自分自身もサービスも成長できる気がします」



最後に、今回のクラウドファンディングの支援者に向け、坂梨さんからコメントをいただいた。

「クラウドファンディングデビューを応援してくださって、感謝でしかないです。応援いただいた方々のコメントを常に見て、今後のプロダクト拡大に向けて頑張っています。本当に温かい世界ですよね。支援者のみなさんがMEDERIを支えているぞ!と思って、今後も注目してもらえると嬉しいです(笑)」