実施事例

バーチャルYouTuber主催!?異例の飲食店『任侠カフェ』プロジェクト成功の秘訣に迫る

クラウドファンディングを一つのコンテンツと捉え、プロジェクトを実施する人もいる。
バーチャルYouTuber(以下、Vtuber)の懲役太郎もまた、クラウドファンディングを一つのコンテンツとして活用していた。

今回は、懲役太郎のプロデュース・運営を行うVtuberコンサルの俺太郎さんから、目標達成までの取り組みや意識したポイントについて話を伺った。

プロジェクトデータ
  • プロジェクト名
    名古屋で「任侠カフェ」を開きたい
  • 実施目的
    カフェの開設資金調達/コンテンツの認知拡大
  • 実施期間
    2020年2月1日~3月30日
  • 調達金額
    9,743,631円

チャンネル登録者数14万人、人気Vtuber『懲役太郎』とは?

バーチャル刑務所に服役中のVtuberとして2018年7月から活動を開始した『懲役太郎』。主に、YouTubeで刑務所事情や事件の解説・持論を述べたり、ゲーム実況をしたり、YouTube以外では電話相談やVoicyによるラジオ配信、リアルイベントの開催などの活動を行っている。

現在、YouTubeのチャンネル登録者数は14万人、Twitterのフォロワー数1.4万人と人気のVtuberだ。YouTubeのチャンネル登録者は20~30代が中心、9割は男性であるものの、2019年8月から定期開催している100人規模のリアルイベントには5割近い女性が参加することから、男女ともにファンが多いようだ。ファン層の属性に偏りはなく、俺太郎さん曰く「適当に日本中から集めた感じ」だそう。

というのも、懲役太郎のコンテンツづくりでは、「懲役太郎を知らない人でもおもしろいと思ってもらうこと」を重要視しているからだ。閉じたコンテンツにならないよう、懲役太郎を全く知らない人に向けてYouTubeの動画を配信している。一方、懲役太郎のファンに向けては、生放送やVoicyでのラジオ配信、リアルイベントを中心に活動しており、ターゲットによって発信するコンテンツを分けている。

500万円の資金調達に成功した『任侠カフェ』

そんな懲役太郎が2020年2月、893(やくざ)事務所をモチーフにした『任侠カフェ』を開業すべく、クラウドファンディングを実施した。

「リアル店舗を出したい」懲役太郎の願い

キッカケは懲役太郎の「リアル店舗をやってみたい」という願いだ。
しかし、店舗をつくるからには、安定的に運営していく必要がある。懲役太郎のファンに向けるだけでは儲けを出すことが難しい。そこで、ここでも「懲役太郎を知らない人でもおもしろいと思ってもらう」店舗を考えた。

「当初は、電話でお悩み相談をする企画をしていたことから『相談所』のアイデアや、元893というネタで刑務所の事情などを話すコンテンツを配信していることから『刑務所や監獄をモチーフにしたカフェ』のアイデアを出しました。でも、『相談所』はファン向けの閉じたコンテンツになってしまうし、すでに監獄カフェはすでに存在するため、断念。いろいろ模索していく中で考えついたのが、893の事務所をモチーフにした『任侠カフェ』でした。

『龍が如く』や『Vシネマ』などの893ファンタジーが好きな人は一定数います。そういった人たちをターゲットにしよう、懲役太郎は一切関係ないと思ってもらって構わないと考えました」

『893事務所をモチーフにしたカフェ』というアイデア自体は既出だったものの、実店舗として存在はしていなかった。懲役太郎との親和性と世の中の需要を叶える形でこの企画が成立した。

クラウドファンディングを一つのイベントに

企画を考えている当初からクラウドファンディングの活用を念頭に置いていたという。

「リアル店舗の開業にはそれなりにお金がかかるため、シンプルに資金調達したいと。加えて、クラウドファンディングを一つのイベントにして懲役太郎の物語をつくろうと考えました」

資金調達という目標に向けて、動画や生放送を活発的に配信、SNSで宣伝をすることで、懲役太郎本人の宣伝にもつながると考え、2020年2月1日にクラウドファンディングを実施。
さまざまな施策を打ち、徐々に盛り上がりを加速させていき、3月10日に目標金額の500万円を突破した。

クラウドファンディングをコンテンツ化。仕込んだ小ネタとこだわりのポイント

『名古屋で「任侠カフェ」を開きたい』このプロジェクトはとにかく“ネタ”に振り切っている。俺太郎さんも「支援してもらう人を笑わせること」を一番に考えて、プロジェクトページの設計から宣伝まで考えていったという。

俺太郎さんが取り入れた小ネタの数々や、こだわったのポイントを紹介していく。

● 想像力をかき立てる「店内予想写真」

893事務所感を演出するために、あえて店内予想図にモザイクをかけたという。

本物の893事務所に写真を撮りに行くことは困難なため、「それっぽく見える画像」を用意して、雰囲気が伝わる工夫をしている。

● 語呂合わせで設定した「支援金額」

一部のコース金額は支援語呂合わせにしている。

▼ 一部例
・後援会コース:893円(やくざ)
・幹部コース:11,893円(いいやくざ)
・本部長コース:241,893円(つよいやくざ)
・最高顧問コース:395,910円(さんきゅーごくどう)

ある程度の金額を決め、そこの金額に近い語呂を考えて設定している。また、コース名も893の役職や階級、懲役太郎にまつわるワードを設定。金額やコースを見て、笑えるような演出を意識したという。俺太郎さんが個人的に気に入っているコースは「本部長コース:241,893円(つよいやくざ)」とのこと。

● 893を連想させる「リターン」

リターンの内容は、893を連想させるようなものを意識している。

▼一部例
・若頭コース:懲役太郎サイン入り黒塗り高級車(中古)など
・舎弟コース:懲役太郎サイン入り鎧兜(中古)など
・顧問Aコース:懲役太郎サイン入り壺など

どれも高額のコースではあるが、「OUT OF STOCK」の文字が。俺太郎さんは「この金額を支援してほしいと思ってつくったコースではなく、ページを見たとき小さな笑いどころを用意したいと思いました」とコメントした。堅苦しく支援を促していないことが、結果的に高額支援に繋がったのかもしれない。

● 支援者の声を吸い上げた「リターン」

プロジェクトページを公開して少し経ったタイミングで「使えるグッズがほしい」という支援者の声が上がった。運営チームはグッズにあまり興味のないメンバーだったことから、そのアイデアに至っておらず、ネタと利益率ばかりを考えていたという。

そんな支援者の声を拾い上げ、「マグカップコース」を追加。結果、一番人気のコースとなった。

● リターンを小出しにした「話題づくり」

最初にすべてのコースを出しきらず、あえて小出しにしているのもポイントだ。少しずつ出すことで、都度話題を生み出している。

「若頭コース」が在庫切れになった際には、「舎弟頭コース」を投入。このように時期を見計らって更新していった。

また、目標金額を達成した際には、ストレッチゴールとして「懲役太郎の生首作成」を設定。これは、以前大きく話題になったクラウドファンディングプロジェクト『インスタをやるために斗和キセキのめちゃくちゃリアルな生首を作りたい!』を参考に考案したという。同じVtuberの企画を参考にしているため、ネタが分かる人たちの間では話題になったとか。

● 「生配信」を毎日更新

普段から週3日(火水木)は生配信を実施していた、懲役太郎。クラウドファンディング実施直後は同じように配信をしていたが、さまざまな宣伝をしてみた結果、生配信後が一番支援の伸びを感じたという。そこで、可能な限りクラウドファンディング実施期間は毎日の生配信を心掛けたという。

また、プロジェクト終了の1日前である3月29日には有名なVtuberを集め『懲役太郎資金集めパーティ』と題した生配信を企画。プロジェクト公開後の生配信の反響をキッカケに急遽企画したという。

● Twitterを活用した「宣伝」

支援者の名前を記載した「初代更生会組織図」の更新状況を定期的にツイートしている。その定期ツイート共に、「支援者からの要望を募集する」といった工夫が取り入れられている。

また、先日話題になった某ワニの4コマ漫画を参考に、クラウドファンディング終了までの期間、俺太郎さんが4コマ漫画を毎日更新した。

「生配信含め、定期的に発信し続けることで、頑張っている姿や一生懸命取り組んでいる姿を見せたかった」と語る俺太郎さん。

「最初のひと月目はとにかくクラウドファンディングを認知してもらうことに徹底しました。そこから、残りのひと月を使って、支援を得るためにアピールするという流れに。結果、開始後一ヵ月を過ぎた3月10日に目標金額を達成し、そこから最後の追い上げで9,743,631円を達成することができた。頑張る姿を見せるのがクラウドファンディングの醍醐味だと思い、最後の最後まで一生懸命やろうと取り組みました」

Vtuberがクラウドファンディングを活用するメリット・デメリット

支援総額は9,743,631円となった本プロジェクト。俺太郎さんは「予想以上に集まりました」とコメントした。そして、Vtuberがクラウドファンディングを活用することのメリット・デメリットについて以下のように話した。

【メリット】コンテンツ力を可視化できる

「クラウドファンディングでコンテンツ(Vtuber)がどれだけお金を生み出せるか可視化できる」という。支援が多ければ多いほど、コンテンツの力の強さを感じられるだろう。

万が一、懲役太郎の人気がなく、どのようなキャラクターなのか認知されていなかった場合、クラウドファンディングを実施しても支援は集まらないだろう。また、懲役太郎がキャラクターと全く関係ないプロジェクト(例えば、猫カフェなど)を実施しても同様だ。

キャラクターの人気に加えて、「キャラクターのファンが求める、求めた以上のおもしろいコンテンツをつくれているか」、これが数字(支援金額)となってクラウドファンディングで可視化できる。

【デメリット】浅いファンの離脱

「クラウドファンディングの宣伝をしすぎたことで、YouTube生放送の平均再生数が落ちたかもしれない」という。Vtuberは深いユーザーだけでなく、浅いユーザーにも支えられているコンテンツだ。とはいえ、新規のファンや、まだそこまで深いファンではない場合、支援したいと思うのは難しいかもしれない。

俺太郎さんは、クラウドファンディングを実施時「この期間だけは許してほしい」と割り切って宣伝した。そして、割り切るだけでなく、「宣伝もネタとして見てもらえるように」は常に意識したという。宣伝用の企画でさえもおもしろさを追求したのだ。

そのために、嘘をつかない、宣伝を隠さないと俺太郎さんは決めていた。3月29日の生放送企画『懲役太郎資金集めパーティ』は、あえて宣伝だと分かるようなタイトルにしている。内容を明かさず、見てみたら実はクラウドファンディングの宣伝だった場合、厭らしさを感じるだろう。初めから隠さずに伝えることで、ネガティブな要素を排除していた。

また、当初の予定では2020年夏頃に『任侠カフェ』を開店する予定だったが、コロナウイルスの影響で難しくなる可能性を鑑みて、早い段階で「コロナウイルスの状況を見て動きます」と伝えた。こういった素直さが支持を集めたのかもしれない。

Vtuberでクラウドファンディングの活用を考えている人へアドバイス

最後にVtuberでクラウドファンディングの活用を考えている人に向けたアドバイスを俺太郎さんに伺ったところ「おもしろいプロジェクトにすること」と語った。

「Vtuberはどこまでいってもエンターテインメントの人間だと思います。だからこそ、ただ資金集めのツールとして使うのではなく、資金集めをしながら楽しませないといけません。Vtuberのスーパーチャット(YouTubeの投げ銭機能)と同じで、おもしろいコンテンツと認識してもらえれば、コンテンツにお金を払ってくれます。まずは、ファンを楽しませる、そしてファンじゃない人も楽しませる、それを意識するとクラウドファンディングの成功に近づくのではないかと思います」

俺太郎(おれたろう)
『懲役太郎』のプロデュース/運営に携わる。元漫画家。企画、動画編集、Vtuberのコンサル業務なども行う。

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阿部 裕華

取材好きなフリーライター/編集者。WEBメディア中心に編集・企画・進行管理(たまに撮影・デザイン)もやります。アニメ・コンテンツビジネス・映画・音楽(主にBUMP)が大好きです。

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